令和4年度研修医

専攻医
篠原 陸斗

私は医師3年目で北大精神科に入局して北大病院で精神科後期研修を行いました。その中で、臨床業務と並行して齧歯類を用いた統合失調症の基礎研究を行う貴重な経験をさせていただきましたので、ご紹介させていただければと思います。

高校生〜医学生時代に山中伸弥先生や本庶佑先生のノーベル賞受賞のニュースに触れて、「研究者は楽しそうでいいなあ」という漠然とした興味を抱いており、学生時代は免疫学教室で実験に従事しておりました。以後、大学卒業と初期研修終了の二度のタイミングで基礎研究に専念するタイミングがありましたが、結局現在まで臨床医を続けています。その理由としては、やはり生命科学が病気の克服を主目標とする以上、基礎的な知見を臨床場面に還元するためには、臨床医(特に専門性を持った臨床医)の視点が必要不可欠だと感じたからです。しかし、専門医制度発足以来、専門医取得と精神科指定医取得の要件は年々厳しくなっており、実際に臨床研修と基礎研究を並行して行う正攻法は今なお存在しません。

そのような状況の中で北大精神科では大変ありがたいことに基礎研究に取り組むチャンスをいただき、当教室助教授の石川修平先生の指導のもとで「脳内炎症に注目した統合失調症の新たな治療標的の探索」というテーマで研究を行ってまいりました。幸いなことに学術的に面白い結果もでてきており、当教室教授の久住一郎先生が大会長を務めましたBPCNPNPPP4学会合同年会(2022年11月、東京)では学会発表を行いました。さらに、2023年度も引き続き論文投稿や国際学会発表を予定しており、楽しみなイベントが盛り沢山な状況です。

1年間の研修を振り返ると、臨床医・研究者として駆け出しの時期に非常に多くの貴重な経験をさせていただいたように感じます。まさに先生方と、そして患者さんから一度に多くの課題をドサっと渡されてしまったような気持ちですが、今後ゆっくり時間をかけて一つずつ解決してゆければと思っております。いつか、臨床の最前線の先生方が興味津々に食いついてしまうような、面白い研究結果を出せればと考えております。

最後に、当教室における基礎研究の宣伝になりますが、齧歯類を対象に精神疾患モデルを作成し、一般的な行動実験や生化学技術を用いた解析を行っております。齧歯類の実験系で得られた結果が、本当に臨床的意義があるものか?という点に関してはかなり拘って日々議論しており、ヒト臨床検体を用いた解析と組み合わせることで、より強固な知見を積み重ねてゆくことを目指しております。

絶滅寸前の危機に瀕する研究医、いわゆるPhysician-scientistの仲間に加わっていただける先生がおりましたら、大変心強く感じるところですので、ぜひ興味を持っていただければ幸いです。