臨床精神病理グループ

メンバー(令和5年度)

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研究内容(令和4年度)

令和4年度は、前年に引き続き、朝倉、賀古、三井、藤井、豊島、髙信の6人体制となった。研究に関しては、博士課程2年目の留学生のヌイェーン・タン・ダットが加わる形となった。

朝倉は、第14回日本不安症学会学術大会の「不安症・強迫症の診療ガイドラインの現在地」のシンポジウムで「社交不安症のガイドラインの現在地」の発表、第118回日本精神神経学会学術総会の「各不安障害における神経発達症の依存の意義そしてインパクト〜その臨床的特徴や対応を中心に〜」のシンポジウムで「社交不安症における神経発達症の併存の意義」の発表、第41回日本社会精神医学会の「現在の社会病理を反映するcommon diseaseとしての不安障害〜最近の臨床像の動向と対応〜」のシンポジウムで「現在の社会病理を反映するcommon diseaseとしての社交不安症〜最近の臨床像の動向と対応〜」の発表をおこなった。また、「社交不安症診療ワークショップ〜診療ガイドラインに基づく治療介入を学ぶ〜」のワークショップを第14回日本不安症学会学術大会、第118回日本精神神経学会学術総会、第44回日本生物学的精神医学会/第32回日本臨床精神神経薬理学会/第52回日本神経精神薬理学会/第6回日本精神薬学会/4学会合同年会でおこなった。総説としては、精神医学誌の増大号「精神科診療のピットホール」に「社交不安症」が掲載された。その他、講演会、研修会などで社交不安症や職場のメンタルヘルス、学生のメンタルヘルスなどの講演をおこなった。

賀古は、令和4年4月に開院した司法精神医療センターでセンター長/准教授として勤務した。司法精神医学に関連する業績は司法精神医学グループのほうで記載する。摂食障害関連では、第118回日本精神神経学会学術総会での委員会シンポジウム「ICD-11を適切に使うための知識」において「食行動症および摂食症群」を担当した。統合失調症関連では、「精神科治療学」誌の増刊号「精神科臨床ライブ」の中で「『信じてください。私は集団ストーカーの被害を受けているんです』―妄想への同意を主治医に求めてくる統合失調症患者にどう対処するか―」を執筆した。また、大学院生服部幸子の修士論文「気分障害に対する集団認知行動療法の効果予測に関する研究」を指導し、学位取得に至った。

三井は、今年度は病棟医長として、病棟の運営に携わることとなった。コロナ禍に精神科神経科病棟においても、複数のコロナ陽性患者が発生することがあり、例年にない事態にも見舞われた。臨床は、摂食障害の入院および外来の診療が中心であった。研究に関しては、大学院生のヌイェーン・タン・ダットと共同で、論文作成を行った(Front Psychiatry, 15, June 2022)。大学生の自殺予防に有効な治療プログラムに関するシステマティックレビューであり、現在行っている大学生の自殺予防プログラムの研究開発につながる研究であった。学会発表は社交不安症のガイドライン作成に関連して、ワークショップや社交不安症のシステマティックレビューの紹介などを行った。また司法精神医学グループにも所属し、研究会などにも参加し、精神鑑定にも携わった。

藤井は、統合失調症と確信型対人恐怖の認知機能の比較を行い、Asian Journal of Psychiatry誌に「Comparison of convinced subtype of Taijin-kyofu and schizophrenia on cognitive assessments of Japanese patients 」が掲載された。また、保健センターで例年行われている検診時のスクリーニングデータおよび受診時のデータを整理し、社交不安症およびうつ病発症に関与するパーソナリティおよびライフイベントの関係について論文執筆中である。さらに、臨床精神薬理誌に「特集非薬物療法と薬物療法の併用におけるエビデンスと注意点:社交不安症に対して認知行動療法と薬物療法を併用する際の効果と注意点」の執筆を行った。不安症、強迫症診療ガイドライン作成合同委員会における社交不安症担当としての活動も継続しており、第14回日本不安症学会学術大会、第118回日本精神神経学会学術総会、BPCNPNPPP4学会合同年会 の社交不安症診療ワークショップ や、各種講演会で社交不安症の薬物療法について講演している。また、日本精神神経学会精神科病名検討委員会委員として、とくに不安症関連の日本語病名の検討にも従事している。令和5年度転出となるが、今後も診療、教育、研究に関わっていく予定である。

豊島は、気分障害の認知リハビリテーション、学生教育、気分障害クルズス、もの忘れ検査入院等を担当し、教室行事において、「双極性障害における認知機能障害」を発表した。また、もの忘れ検査入院のデータベースを用いて、専攻医の学会発表および論文作成の指導を行った。現在は、双極性障害の認知機能障害に関する研究を行っている。

今年度は司法精神医療センターの開設の年となり、北海道初の指定入院医療機関の運営が開始された。また新型コロナウイルス感染症の影響も続き、病棟では大きな影響を受けたが、診療、研究、教育の質を維持すべく努力を継続した年であった。次年度も各自の研究を発展させながら臨床、教育を充実させる年としたい。

(文責:三井 信幸)