平成24年度研修医

初期研修医
髙信 径介

私は平成25年4月~平成25年3月まで地域研修の1ヶ月を除いた11ヶ月間、北大病院の精神科で研修させていただきました。その感想、および長期研修の大まかな流れをここに書かせていただきます。

年間を通して研修医の主な業務は外来と病棟に分かれます。外来では新患外来の診察を予診および書記を担当しながら見学し、症例に関しての指導を受けます。病棟では入院患者を常時平均8名ほど担当し、指導医の先生と共に診察や治療を行います。他にはリエゾンと呼ばれる他科からコンサルトのあった患者の往診や、時間外の患者への対応などがあります。年間を通してクルズスという小人数での勉強会があり、研修医同士で担当範囲を割り当て、学習した内容を教官の先生の指導のもと発表し合ったりします。

イベントも多く、歓送迎会、観楓会、忘年会、ジンギスカンパーティー、ボーリング大会などを通して教室スタッフとの親睦を深めたり、酩酊した上級医の意外な一面を見て人間性に関する洞察を深めたりします。戦力とみなされた場合、医局対抗のサッカー、野球、バスケットボールの大会に招集され、心身を鍛える機会を得ることもあります。また、月に1回程度、大学の近くの飲み屋で研修医の非公式のカンファレンスが開かれ、慰め合ったり、宴会の芸の打ち合わせをしたり、指導医の攻略法について日頃の研究成果を報告し合ったりします。このような院外での課外活動も研修の一環であり、人の心の本質に迫り、清濁併せ飲む懐の深い精神科医としての素地を作り上げていきます。研修の特徴はというと、特定の疾患や分野に偏ることなく、広くバランスのとれた診療を経験できるのが北大精神科の魅力です。心因性の疾患からてんかんなどの器質的疾患にいたるまで様々な症例を経験できることに加え、最新の知見に基づく生物学的視点と、長い伝統を背景にもつ精神病理学的なアプローチの両者を尊重しようという空気があります。私は司法精神医学に興味があったので精神鑑定に助手として携わらせていただきました。興味のある分野があれば、積極的に主張していくのがいいかもしれません。

研修は受け身ではなく、主体的に診療に関わることを求められます。カンファレンスや症例検討会での発表においては、オーベンの指導のもと、自分の頭で考え、文献を探し、根拠に基づいた論理的な説明を要求されます。日々の診療、クルズス、症例の発表、上級医からのフィードバック、それらが全て同時並行で進み、年間を通して責任と専門技能を持った医療者になるためのトレーニングを積むことができるのだと思います。休日や夏期休暇は保証されており、ライフワークバランスにも特に困ることはないかと思われます。

以上、北大精神科での長期研修の内容およびその魅力に関して概観しましたが、(賢明な読者であればお気づきのように)政治的圧力等のバイアスを排除しきれていない可能性があるので、興味のある方はとりあえず一度見学してみることをお勧めします。私自身は、精神科医としての人生の最初の1年をここで過ごすことができてよかった、と思っています。