平成30年度研修医

専攻医
仙 万梨子

医師3年目、専攻医1年目として北大病院で1年間研修をさせていただきました。北大精神科の伝統と共に、先生方それぞれのキャラクターを活かした精神療法をそばで学ぶことができ、精神科医としても人間としても刺激的な1年でした。また、北大はチーム医療に力を入れており、異なる職種の方が多くいらっしゃいます。どの方も熱心で、研修医とも真剣に関わってくださり、本当に多くのことを学ばせていただきました。精神科に携わってきた経験値もさることながら、自分が習ってきら観点以外からの切り口で物事をみており、気付かされることが多々ありました。また、先生方のホームページや先輩方の感想でも触れられておりますが、業務から意外にも基礎をみっちり教えていただける勉強会(クルズス)も本当にありがたく、日々の診療に直接反映させることができるもので大変勉強になりました。

入局してからの充実具合は上記の通りですが、次に精神科に入局するにあたって不安に思っていたことがどうなったかを記したいと思います。私はもともと研修医2年目まで他の身体科と迷っておりました。最終的には、学問として、例えば研究するとして、医師人生の中で何を深めたいのだろうという観点から精神科への入局を決めましたが、身体科の診察や手技に魅力を感じていましたし、精神科に入ったら体を診ることができなくなるのではという不安もありました。

【手技がない!?】
確かに腰椎穿刺や電気けいれん療法以外は乏しいです。そのさみしさはないと言ったら嘘になりますが、研修初日に伝えられる「精神科面接は外科医のメス」という言葉通り、面談・精神療法は精神科における手技だと実感しました。聴取や病歴、各種検査などから見立てを行い、面談の組み立てを計画し、状況に応じて臨機応変に対応します。一度口に出してしまった言葉や表に出た態度は取り返しがつきません。面談の時間は短いものから2時間程度かかるものまで様々ですが、毎回ひとつの手技・手術に臨むような気持ちでした。はっきりと見える形ではないかもしれませんが、そのような「技」を経て何かが変わることはとてもやりがいがあります。

【体を診れるの?】
病棟管理など必要な医師として一般的なことより深いことは確かにあまりできません。ただそれは、専門医である限りどの科でもある程度起こることで、精神科という専門性に責任と誇りをもち、他科からの依頼含め業務に当たることが基本となります。しかし特記したいことは、精神科特有の「体を診れなければいけない」という責務があることです。精神科には「精神症状がはっきりと出ている患者さん」も「体に症状があるけれどもどこにも異常がなくて精神的なものと疑われた患者さん」もいらっしゃいますが、両者ともに身体疾患が背景にある可能性があります。精神科で精神疾患と診断するということは、実は治療可能な身体疾患であったとしても正しい治療を受けられないということであり、私は精神科は身体疾患診断の最後の砦と考えています。北大精神科では、第一に器質性疾患を検討するという原則を学ぶことができ、また合併症に関してはリエゾンも大変勉強になります。体を診ずに過ごすこともできる科かもしれませんが、このような意識を持つ方にも学ぶ環境は整っております。このようにして私の不安は解消されていったのでした。長々と書きましたが、とにかく充実して楽しい1年でした。様々な迷いのなか精神科を検討されている方もいらっしゃると思いますが、まずはぜひ見学にいらして、そこから大いに悩んでいただけたらと思います。