令和5年度研修医

専攻医
新福 伸久

私は北海道大学卒業後、初期研修を本州の病院で行い、医師3年目で北大精神科に入局しました。元々出身が東京ということもあり、首都圏や他の地域での後期研修も考えていた上に、精神科だけでなく他科も視野に入れていましたが、最終的に出した結論は北大でした。精神科を選んだ理由については他の先生方が語っていただけると思うので割愛し、なぜ北大精神科を選んだかという点について焦点を当てたいと思います。

精神科に進む上で、まず専門医を取るかどうかが最初の分岐点になるかと思います。専門医プログラムに乗らなくても指定医取得は可能なため、指定医取得を目標に募集をする病院は日本全国に存在します。実際、待遇や立地も選べ、転勤も少ないなどを考慮すると非常にコストパフォーマンスの高い選択肢と言えます。しかし、私には最初からその選択肢はありませんでした。というのも、そのような病院は単科精神科病院であることが多く、キャリア初期は総合病院などで様々な症例を経験したいと考えていたためです。実際、北海道大学病院は日本有数の大学病院であり、精神科疾患だけもジャンルは多岐に渡りますが、リエゾンではせん妄はもちろんのこと、救急、臓器移植、産婦人科領域、緩和など毎日様々な症例がやってきます。色々と目移りしてしまう自分にとっては、日々様々な経験ができる大学病院は刺激的でした。

次の分岐点は医局に入るかどうかでしょう。数は少ないですが、医局に属さない(あるいは研修のほとんどを特定の病院で行える)専門医プログラムが存在します。得てしてそのようなところは人気病院であることが殆どです。内定を貰いにくいと感じていたため、当初より選択肢にならなかったことも一因ではあります。ただそれ以上に、どこかに所属する意義は大切だと考えていました。医局が同じであれば初めてお会いする先生とも話がしやすいですし、他の医局に所属している先生であっても、「医局に所属している」という共通項だけでお互いの現況などの話ができます。初期研修先が医局派遣の先生と医局に所属したことのない先生が混在する病院であったため、医局に所属していない先生は、孤高で日々黙々と技術を磨いるような印象を強く受けました。そこまでストイックになれない自分は、長い物には巻かれろの理論で医局に入ることを決めました。

最後に、数ある医局の中でなぜ北大を選んだのかという点についてです。出身大学であったこと、そして部活の先輩が複数在籍されていることも当然理由の一つです。しかし、最も大きな入局理由は教育システムです。他大学の説明会をオンラインなどで拝聴しましたが、やはり北大以上の研修を提供できる機関はないと感じました。また、学生時代の病院実習では「当たり前すぎて」気がつかなかったのですが、日本全国似たような精神科研修が行われているものなのだと思っていました。しかし、初期研修の際に行ったそれなりに名の通った病院での研修が、学生実習からあまりにもかけ離れたクオリティであったことに驚愕しました。それ以降、まともな精神科医になるには北大に入るしかないという考えは強くなりました。

実際入ってみると少なくとも北大での1年間には嘘偽りはなく素晴らしいものでした。気になることがあれば第一線で活躍されるにすぐ聞くことができ、そこで解決できないような内容は一緒に研究テーマとして深めることを提案して頂けました。変な質問やレベルの低い質問でも馬鹿にするような風潮は一切なく、一つ一つ真摯に応えて下さいます。入局後の教育体制についても他の先生が書いてくださると思うのでそちらを参照いただければと思います。

良いことだけを書くと怪しまれるので、悪い点も述べておこうと思います。ひとつは指定医症例が集まりにくいという点です。特に措置症例が北海道は他都府県に比べ圧倒的に少なく、病院によっては4年に1例であったりと信じられないくらい少ない地域もあるようです。幸いにして私は赴任して1カ月ですが既に1例確保できましたし、今後流れが変わっていくことに期待しています。また、全国の医局の中でトップクラスに広範囲な地域医療をやっていることも考え方によってはデメリットかもしれません。

しかしこれらのデメリットをひっくるめても、北大に入局する価値は十分にあると思います。「コスパ」にはない何かが北大精神科にはあると思います。是非、一緒に働ける日を楽しみにしています。