Morishita C,Kameyama R,Toda H,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I,Inoue T*:TEMPS-A (short version) plays a supplementary role in the differential diagnosis between major depressive disorder and bipolar disorder,Psychiatry and Clinical Neurosciences 75(5):166-171,2021 大うつ病性障害146例と双極性障害128例の入院患者を対象に、TEMPS-A短縮版を用いて、感情気質の診断的妥当性を検討した。多変量ロジスティック回帰モデルを用いると、5つの感情気質のうち、循環気質と不安気質が双極性障害の早期診断に有用であることを見出した。横断的なデザインであることと、大うつ病性障害の診断が双極性障害に変更されうることが本研究の限界である。
Nakazawa H,Masuya J,Tanabe H,Kusumi I,Inoue T*,Ichiki M:Interpersonal Sensitivity Mediates the Effects of Childhood Maltreatment on the Evaluation of Life Events and Anxiety States in Adult Community Volunteers,Neuropsychiatric Disease and Treatment 17,2757-2766,2021 一般成人404例を対象に自記式質問紙法を実施し、対人感受性とライフイベントの評価が媒介因子となって小児期の虐待が状態不安に影響を及ぼす可能性を共分散構造解析を用いて検討した。小児期の虐待が成人期の状態不安を直接的にも対人感受性を介して間接的にも増加させること,対人感受性はライフイベントの否定的評価に対する小児期の虐待の影響を媒介し,ライフイベントの否定的評価は不安症状に対する対人感受性の影響を媒介することが明らかとなった。
Yamamura R,Okubo R,Katsumata N,Odamaki T,Hashimoto N,Kusumi I,Xiao J,Matsuoka YJ:Lipid and Energy Metabolism of the Gut Microbiota Is Associated with the Response to Probiotic Bifidobacterium breve Strain for Anxiety and Depressive Symptoms in Schizophrenia,Journal of Personalized Medicine 11(10),987,2021 腸内細菌叢のプロファイルが、統合失調症患者のプロバイオティクス治療の効果に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。29名の統合失調症患者にBifidobacterium breve A-1を4週間摂取してもらい、Hospital Anxiety and Depression Scaleを評価した。反応者では、非反応者に比べてベースライン時の脂質代謝とエネルギー代謝が上昇していた。
Koga M*,Nakagawa S,Sato A,Oka M,Makikhara K,Sakai Y,Toyomaki A,Sato M,Matsui M,Toda H,Kusumi I:Plasma fatty acid-binding protein 7 concentration correlates with depression/anxiety, cognition, and positive symptom in patients with schizophrenia,Journal of Psychiatric Research 144,304-311,2021 本研究は、中枢神経神経系の脂肪酸代謝の異常が何らかの精神疾患の精神症状に寄与すると仮設を立て、脂肪酸代謝に関わる蛋白の1つである脂肪酸結合蛋白7(FABP7)に着目した。統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害の3疾患の患者を対象に末梢血のFABP7の濃度を測定した。精神症状と相関があったのは統合失調症のみであった。このことから、FABP7に反映される脂肪酸代謝異常は統合失調症の病態の一側面に寄与することが示唆された。
Sakai Y,Chen C,Toyomaki A,Hashimoto N,Kitagawa K,Inoue T,Sato A,Makihara K,Kameyama R,Wakatsuki Y,Udo N,Shirakawa R,Yokota T,Nakagawa S,Kusumi I:A Brief, Individualized Exercise Program at Intensities Below the Ventilatory Threshold Exerts Therapeutic Effects for Depression: A Pilot Study,Frontiers in Behavioral Neuroscience 15,787688,2021 大うつ病性障害における、運動療法は補助的な治療法として行われているが、患者にとって行うこと自体が心理的負担であり課題である。本研究ではうつ病患者にとって実施可能な運動療法として、最小レベルの有酸素運動を実施させる運動療法プログラムを開発し効果を検討した。結果、8週目で有意な抑うつ症状の改善が見られ、QOL、認知機能検査の改善が見られた。強度を調整した運動療法は重要な治療法となることが示唆された。
Sugimori H,Kameda H,Harada T,Ishizaka K,Kajiyama M,Kimura T,Udo N,Matsushima M,Nagai A,Wakita M,Kusumi I,Yabe I,Kudo K:Quantitative magnetic resonance imaging for evaluating of the cerebrospinal fluid kinetics with 17O-labeled water tracer: A preliminary report,Magnetic Resonance Imaging 87,77-85,2022 4名の被験者(特発性正常圧水頭症(iNPH)2名、アルツハイマー型認知症(AD)2名)を対象に、17O標識水(PSO17)トレーサーを用いた脳脊髄液(CSF)の動態解析の実施可能性を検討した。PSO17投与1時間後のピーク濃度,濃度変化の傾き[%/s],フィッティングの性能を評価するための二乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。濃度変化の傾きやRMSEは、AD群においてiNPH群よりも小さく、この方法を用いて両群を鑑別できる可能性が示唆された。
T Saito,Y Hyodo,R Sakaguchi,H Nakamura,J Ishigooka:Long-Term Safety and Efficacy of Blonanserin Oral Tablet in Adolescents with Schizophrenia: A 52-Week, Multicenter, Open-Label Extension Study,Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 32(1),24-35,2021 青年期統合失調症患者を対象としたブロナンセリン経口投与の長期有効性及び安全性・忍容性を評価した。ブロナンセリン錠を1日2回、朝夕の食後に、4~24mg/日の範囲で用量漸増法を用いて52週間にわたり経口投与した。主要評価項目は、PANSS総スコアのベースラインから試験終了時までの変化とした。今回の長期継続試験では、ブロナンセリンの52週間の経口投与により、青年期統合失調症患者の精神症状が改善または安定化することが示された。本試験ではブロナンセリン投与の安全性、忍容性に大きな問題はなかった。体重増加や代謝パラメーターへの悪影響が比較的少なかった。
S Itoh,K Yamazaki,S Suyama,A Ikeda-Araki,C Miyashita,Y Ait Bamai,T Saito et al.:The association between prenatal perfluoroalkyl substance exposure and symptoms of attention-deficit/hyperactivity disorder in 8-year-old children and the mediating role of thyroid hormones in the Hokkaido study,Environment International 159,107026,2022 妊娠中の甲状腺ホルモン(TH)レベルの乱れは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の一因とされている。妊娠中のパーフルオロアルキル物質(PFAS)への曝露は、母体と新生児のTHのレベルに影響を与える可能性がある。妊娠中の母体血清中の高いPFASレベルは、8歳時のADHD症状の低リスクと関連していた。この関連は、不注意よりも多動性-衝動性に関して、長子でより強かった。母親のPFASへの曝露と8歳時のADHD症状の軽減との関連において、妊娠中のTHの媒介的役割はほとんどなかった。
T Saito,S Sugimoto,R Sakaguchi,H Nakamura,J Ishigooka:Efficacy and Safety of Blonanserin Oral Tablet in Adolescents with Schizophrenia: A 6-Week, Randomized Placebo-Controlled Study,Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 32(1),12-23,2022 青年期統合失調症患者におけるブロナンセリンの短期間有効性および安全性を評価した。6週間の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験では、ブロナンセリン16mg/日投与群では、プラセボ群に比べPANSS合計スコアの低下が有意に大きかった。また、ブロナンセリン投与群では、アカシジア、傾眠、高プロラクチン血症などのAE発現率がプラセボ投与群に比べ高かった。ブロナンセリンに関連するAEは概して軽度であり、成人の統合失調症患者における既知のプロファイルと一致した。ブロナンセリンは思春期の患者において十分な有効性を達成し、安全性プロファイルも成人と同様であったことから、ブロナンセリンは思春期の統合失調症患者にとって安全な治療選択肢となる可能性が示唆された。
H Yamasue,M Kojima,H Kuwabara,M Kuroda,K Matsumoto,C Kanai,T Saito et al.:Effect of a novel nasal oxytocin spray with enhanced bioavailability on autism: a randomized trial,Brain,awab291,2022 オキシトシン経鼻剤は、現在承認薬のない自閉症スペクトラム障害の中核症状に対する新規治療法として期待されている。本試験は、TTA-121の自閉症スペクトラム障害の中核症状に対する影響と用量反応関係を明らかにすることを目的として実施された。TTA-121は、プラセボと比較して、臨床的および行動的な副次的転帰を有意に改善することはなかったがバイオアベイラビリティを高めたオキシトシンの新規経鼻スプレーにより、広範囲の複数用量を試験することができ、逆U字型の用量反応曲線を示し、これまでの研究で予想されていたよりも低い用量でピークがあることが明らかになった。
Okano H,Kubota R,Okubo R,Hashimoto N,Ikezawa S,Toyomaki A,Miyazaki A,Sasaki Y,Yamada Y,Nemoto T,Mizuno M:Evaluation of Social Cognition Measures for Japanese Patients with Schizophrenia Using an Expert Panel and Modified Delphi Method,Journal of Personalized Medicine 11(4),275,2021 日本人集団における社会認知機能障害測定のための標準的ツールを確立することが本研究の目的である。精神医学、社会心理学、社会神経科学の各分野の専門家からなる委員会を結成し、修正デルファイ法を用いて議論した。各ルーツの評価基準として、実行可能性・忍容性、信頼性、臨床効果、妥当性、国際比較可能性を設定し,日本で開発された課題を含む9つの有望な尺度を同定した.今後は、これらの尺度を心理学的評価試験で検討する。
Hashimoto N,Takeda H,Fujii Y,Suzuki Y,Kato TA,Fujisawa D,Aoyama-Uehara K,Otsuka K,Mitsui N,Asakura S,Kusumi I:Effectiveness of suicide prevention gatekeeper training for university teachers in Japan,Asian Journal of Psychiatry 60,102661,2021 本研究では、81名の大学教員を対象とし、そのうち63名が一般的なメンタルヘルス講義(MHL)を受け、18名がMHFAに基づく2.5-hのGKTプログラムを受けた。GKT群ではMHL群に比べ、自殺傾向のある生徒の管理に関するコンピテンシーと自身、ゲートキーパーとしての行動意図について有意な改善が認められた。効果的な自殺予防研修には参加者の積極的な関与が重要であることを確認した。
Ozaki T,Toyomaki A,Hashimoto N*,Kusumi I:Quantitative Resting State Electroencephalography in Patients with Schizophrenia Spectrum Disorders Treated with Strict Monotherapy Using Atypical Antipsychotics,Clinical Psychopharmacology and Neuroscience 19(2),313-322,2021 統合失調症患者を対象に,抗精神病薬の厳密な単剤投与が定量的脳波に及ぼす影響について検討した。単剤治療患者31名、薬物非使用患者20名を対象とした。薬物無投与の患者と比較して、抗精神病薬投与患者は、シータ、アルファ、ベータパワーが有意に増加していた。患者によるあらゆる抗精神病薬の使用は、シータパワーの用量依存的な増加と関連していた。抗精神病薬の種類により、スペクトルパワーの変化は異なっていた。
Takeuchi H,Takekita Y,Hori H,Oya K,Miura I,Hashimoto N,Yasui-Furukori N:Pharmacological treatment algorithms for the acute phase, agitation, and maintenance phase of first-episode schizophrenia: Japanese Society of Clinical Neuropsychopharmacology treatment algorithms,Human Psychopharmacology 36(6),e2804,2021 日本臨床神経薬理学会アルゴリズム委員会は,初発統合失調症の急性期,興奮期,維持期の薬物治療アルゴリズムを開発した。急性期治療アルゴリズムでは、薬剤未使用の初発統合失調症患者に焦点を当て、第一から第四選択治療までを示している。激越治療アルゴリズムでは、第一から第三選択薬を示し、中止基準を明示している。維持療法アルゴリズムでは,陽性症状の寛解後,抗精神病薬を最小有効量まで漸減することが推奨されている。
Hashimoto N,Yasui-Furukori N,Hasegawa N,Ishikawa S,Numata S,Hori H,Iida H,Ichihashi K,Furihata R,Murata A,Tsuboi T,Takeshima M,Kyou Y,Komatsu H,Kubota C,Ochi S,Takaesu Y,Usami M,Nagasawa T,Hishimoto A,Miura K,Matsumoto J,Ohi K,Yamada H,Inada K,Watanabe K,Shimoda K,Hashimoto R:Characteristics of discharge prescriptions for patients with schizophrenia or major depressive disorder: Real-world evidence from the Effectiveness of Guidelines for Dissemination and Education (EGUIDE) psychiatric treatment project,Asian Journal of Psychiatry 63,102744,2021 本研究は、EGUIDEプロジェクトの一環として行われた。統合失調症患者2177名とMDD患者1238名の退院時の処方データを収集した。統合失調症患者では高齢者で抗精神病薬、睡眠薬・抗不安薬の処方量が少なかった。抗精神病薬を多剤処方された統合失調症患者では、その他の向精神薬の併用率、使用剤数、使用量とも単剤処方患者と比較して多かった。
Kubota R,Okubo R,Akiyama H,Okano H,Ikezawa S,Miyazaki A,Toyomaki A,Sasaki Y,Yamada Y,Uchino T,Nemoto T,Sumiyoshi T,Yoshimura N,Hashimoto N:Study Protocol: The Evaluation Study for Social Cognition Measures in Japan (ESCoM),Journal of Personalized Medicine 11(7),667,2021 社会認知機能を測定する検査の日本語版に関する評価研究(ESCoM研究)の研究プロトコル論文である。国内3施設から募集された統合失調症患者140名と健常者70名を対象とし、各検査による社会機能予測能を一次結果、各検査の心理測定学的指標を二次結果とする。本研究のプロトコルはUMIN-CTRに登録されている(UMIN000043777)。
Furihata R,Otsuki R,Hasegawa N,Tsuboi T,Numata S,Yasui-Furukori N,Kashiwagi H,Hori H,Ochi S,Muraoka H,Onitsuka T,Komatsu H,Takeshima M,Hishimoto A,Nagasawa T,Takaesu Y,Nakamura T,Asami T,Miura K,Matsumoto J,Ohi K,Yasuda Y,Iida H,Ogasawara K,Hashimoto N,Ichihashi K,Yamada H,Watanabe K,Inada K,Hashimoto R:Hypnotic medication use among inpatients with schizophrenia and major depressive disorder: results of a nationwide study,Sleep Medicine 89,23-30,2021 本研究は、EGUIDEプロジェクトの一環として行われた。統合失調症入院患者2146名と大うつ病性障害入院患者1031名の退院時のデータを用いて、睡眠薬の使用と他の抗精神病薬の使用との関連を評価した。統合失調症患者の55.7%、大うつ病性患者の63.6%に睡眠薬が処方されていた。統合失調症、うつ病の双方において、2種類以上の向精神薬の使用が、睡眠薬の使用と正の相関を示した。
Yasui-Furukori N,Muraoka H,Hasegawa N,Ochi S,Numata S,Hori H,Hishimoto A,Onitsuka T,Ohi K,Hashimoto N,Nagasawa T,Takaesu Y,Inagaki T,Tagata H,Tsuboi T,Kubota C,Furihata R,Iga JI,Iida H,Miura K,Matsumoto J,Yamada H,Watanabe K,Inada K,Shimoda K,Hashimoto R:Association between the examination rate of treatment-resistant schizophrenia and the clozapine prescription rate in a nationwide dissemination and implementation study,Neuropsychopharmacology Reports 42(1),3-9,2021 本研究は、EGUIDEプロジェクトの一環として行われた。講習受講者の勤務施設における統合失調症患者の治療抵抗性(TRS)の評価の有無とクロザピンの処方状況を調査したところ、クロザピンの処方率とTRSの受診率には有意な相関があった。TRSを適切に評価し診断することが、クロザピンの処方率向上につながることが示唆された。
Watanabe S,Mitsui N*,Asakura S,Toyoshima K,Takanobu K,Fujii Y,Kako Y,Kusumi I:Predictors of social anxiety disorder with major depressive episodes among Japanese university students,PLoS One 16(9),e0257793,2021 社交不安症とうつ病の併存例の予測因子を明らかにすることを目的とした。北海道大学保健センターを受診した学生を対象にPHQ-9及びLSASに基づき、コントロール群(43人)、MDE群(16人)、SAD群(28人)、SADとMDE併存群(61人)の4群に分類した。各群の入学時点のパーソナリティ特性および抑うつ症状を予測因子として統計解析したところ、損害回避が高く自己志向が低いパーソナリティ特性、およびPHQ-9得点が高いことがSADとMDE併存の予測因子であった。
Fujii Y*,Asakura S,Takanobu K,Watanabe S,Toyoshima K,Mitsui N,Kako Y,Hashino S,Kusumi I:Prevalence of depressive symptoms and psychological distress in Japanese university-enrolled students before and during the coronavirus disease 2019 pandemic,Psychiatry and Clinical Neurosciences 75(9),294-295,2021 北海道大学では入学時のスクリーニングとしてPHQ-9、K10を施行しており、COVID-19流行前と2020年度を比較した。流行前と比較して2020年度では、PHQ-9によるうつ症状は増加しているもののK10による心理的苦痛は増加していなかった。COVID-19の流行状況や大学新入生の就学状況、生活状況の変化は、うつ症状には増悪因子、不安症状には保護因子が相対的に強く関与していると思われる。
Toyoshima K*,Inoue T,Shimura A,Uchida Y,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Mediating Roles of Cognitive Complaints on Relationships between Insomnia, State Anxiety, and Presenteeism in Japanese Adult Workers,International Journal of Environmental Research and Public Health 18(9),4516,2021 パス解析により、成人労働者471名における、不眠、状態不安、主観的認知機能、およびプレゼンティーイズムの関係について検討した。主観的認知機能は、不眠および状態不安のプレゼンティーイズムに対する影響を有意に媒介した。成人労働者において、不眠および状態不安と関連したプレゼンティーイズムに対処する際には、主観的認知機能の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Ichiki M,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:The Role of Cognitive Complaints in the Relationship Between Trait Anxiety, Depressive Symptoms, and Subjective Well-Being and Ill-Being in Adult Community Volunteers,Neuropsychiatric Disease and Treatment 17,1299-1309,2021 パス解析により、一般成人ボランティア554名における、特性不安、抑うつ症状、主観的認知機能、および主観的健康感・主観的不健康感の関係について検討した。主観的健康観に対する特性不安と抑うつ症状の影響は、主観的認知機能によって媒介されなかった。しかし、主観的不健康感に対する特性不安と抑うつ症状の影響は、主観的認知機能によって媒介された。本研究により、主観的健康観と主観的不健康感では、主観的認知機能の役割が異なる可能性が示唆された。
Toyoshima K*,Inoue T,Shimura A,Uchida Y,Masuya J,Fujimura Y,et al.:The mediating effects of perceived cognitive disturbances on reported sleep disturbance, presenteeism, and functional disability in Japanese adult workers,Journal of Affective Disorders Reports 5,100180,2021 共分散構造分析により、成人労働者458名における、不眠、主観的認知機能、プレゼンティーイズム、および機能障害の関係について検討した。主観的認知機能は、不眠のプレゼンティーイズムおよび機能障害に対する影響を、有意に媒介した。成人労働者において、不眠と関連したプレゼンティーイズムおよび機能障害に対処する際には、主観的認知機能の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Inoue T,Shimura A,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:The Relationship among Sleep Reactivity, Job-Related Stress, and Subjective Cognitive Dysfunction: A Cross-Sectional Study Using Path Analysis,Industrial Health 59(4),229-238,2021 パス解析により、成人労働者536名における、睡眠反応性、職業性ストレス、および主観的認知機能の関係について検討した。職業性ストレスは、睡眠反応性の主観的認知機能に対する影響を有意に媒介した。成人労働者において、不眠と関連した主観的認知機能障害に対処する際には、職業性ストレスの媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Inoue T,Baba T,Masuya J,Ichiki M,Fujimura Y,Kusumi I:Associations of cognitive complaints and depressive symptoms with health-related quality of life and perceived overall health in Japanese adult volunteers,International Journal of Environmental Research and Public Health 18(18),9647,2021 パス解析により、一般成人ボランティア525名における、抑うつ症状、主観的認知機能、健康関連QOLおよび知覚された健康状態の関係について検討した。抑うつ症状は、主観的認知機能の健康関連QOLおよび知覚された健康状態に対する影響を、有意に媒介した。一般成人において、主観的認知機能と関連した健康関連QOLおよび知覚された健康状態に対処する際には、抑うつ症状の媒介作用を評価することが有用と考えられた。
Toyoshima K*,Ichiki M,Inoue T,Shimura A,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Subjective cognitive impairment and presenteeism mediate the associations of rumination with subjective well-being and ill-being in Japanese adult workers from the community,BioPsychoSocial Medicine 15(1),15,2021 パス解析により、成人労働者458名における、反芻、主観的認知機能、プレゼンティーイズム、主観的健康感および主観的不健康感の関係について検討した。主観的認知機能とプレゼンティーイズムは、反芻の主観的健康感および主観的不健康感に対する影響を有意に媒介した。成人労働者において、反芻と関連した主観的健康感および主観的不健康感に対処する際には、主観的認知機能とプレゼンティーイズムの媒介作用を評価することが産業精神保健において有用と考えられた。
Takanobu K,Mitsui N,Watanabe S,Toyoshima K,Fujii Y,Kako Y,Asakura S,Kusumi I:Character configuration, major depressive episodes, and suicide-related ideation among Japanese undergraduates,PLoS One 16(5),e0251503,2021 大学生を対象とし、入学時に実施したTCIで測定された性格傾向(character configurations)と、入学3年後にPHQ-9で検出された自殺のリスクとなる症状(抑うつ症状、自殺関連念慮)の関連を調査した。本研究ではself-directedness(SD)とcooperativeness(C)がともに低い性格傾向にある学生は、抑うつエピソードや自殺関連念慮の出現が増える傾向が示された。
Ishikawa S,Yamamura R,Hashimoto N*,Okubo R,Sawagashira R,Ito YM,Sato N,Kusumi I:The type rather than the daily dose or number of antipsychotics affects the incidence of hyperglycemic progression,Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry 113,110453,2021 抗精神病薬の種類、1日の服用量、併用薬剤数などの薬物治療に関連した要因に加え、背景因子などの複数の要因が高血糖症の進展に与える影響を検証した結果、抗精神病薬によって生じる高血糖症への進展リスクには1日服用量や併用薬剤数よりも開始した薬剤の種類が大きな影響を及ぼすこと、抗精神病薬の中でもゾテピンとクロザピン治療の開始が高血糖症への進展リスクを高めることが明らかとなった。
Yagyu K*,Hashimoto R,Shimojo A,Iwata M,Sueda K,Seki A,Shiraishi H,Saito T:Development of a reading difficulty questionnaire for adolescents in Japanese,Brain and Development 43(9),893-903,2021 中学生以降の日本語読字障害を対象としたスクリーニング方法はないため、独自の28項目からなる自記式質問紙を作成した。成人462名、中高生127名が参加し、うち191名は音読検査にも参加し、読字障害の中高生読字障害の結果を加えた。質問紙は黙読(4項目)、書字(4項目)、音読の3因子から構成され、黙読・音読の因子は、音読時間と正の相関を示した。本質問紙は中学生以降の読字困難の診断や支援への一助となる。
2.症例報告(* corresponding author)
Takanobu K*,Okazaki D,Watanabe S,Mitsui N,Tanaka T:Pulverizing medication as a harm reduction and intentional drug overdose prevention strategy: Two case studies,Neuropsychopharmacology Reports 41(3),430-433,2021 意図的な過量服薬を防止するために処方薬の粉砕を行った症例2例について検討した。過量服薬を繰り返す統合失調症の19歳女性と神経発達障害の27歳女性に対し、睡眠薬等の錠剤を粉砕し粉末状にして処方することにより、それぞれ3年間と5年間、意図的な過量服薬を防ぐことができた。処方薬の粉砕は、精神障害の種類にかかわらず、自殺手段へのアクセスを制限することで意図的な過量服薬を予防する手段であることが示唆された。
Onitsuka T,Hirano Y,Nemoto K,Hashimoto N,Kushima I,Koshiyama D,Koeda M,Takahashi T,Noda Y,Matsumoto J,Miura K,Nakazawa T,Hikida T,Kasai K,Ozaki N,Hashimoto R:Trends in big data analyses by multicenter collaborative translational research in psychiatry,Psychiatry and Clinical Neurosciences 76,1-14,2022 Cognitive Genetics Collaborative Research Organization (COCORO)は、精神疾患の病態解明を目的に、精神医学、分子生物学、ゲノム科学、神経画像学、認知科学、神経生理学、心理学、薬学など、さまざまな分野を横断する多施設共同研究を行うコンソーシアムである。本論文では、COCORO研究からえられた、精神疾患の病態生理に関係する、様々な領域の研究の治験を紹介する。