Morishita C,Kameyama R,Toda H,Masuya J,Ichiki M,Kusumi I,Inoue T*:Utility of TEMPS-A in differentiation between major depressive disorder, bipolar I disorder, and bipolar II disorder,PLoS ONE 15(5),e0232459,2020 感情気質と気分障害の関連が注目されている。双極I型障害 58例、双極II型障害 112例、大うつ病性障害 176例を対象に、自記式質問紙法TEMPS-Aを施行し、各疾患の鑑別に有用かどうかを検討した。循環気質と不安気質は、双極性障害と大うつ病性障害の鑑別に、発揚気質は、双極I型障害と双極II型障害の鑑別に有用であることが示唆された。
Scott J*,Bellivier F,Manchia M,Schulze T,Alda M,Etain B;ConLiGen collaboration:Can network analysis shed light on predictors of lithium response in bipolar I disorder?,Acta Psychiatrica Scandinavica 141(6),522-533,2020 リチウム反応性遺伝子研究コンソーシアムで集められた双極I型障害900例のデータを用いて、リチウム反応性が良好な予測因子についてネットワーク解析を行った。リチウム反応が良好な表現型として、パニック障害合併、躁病優位型、初発が躁病、初発が15~32歳、双極性障害の家族歴が、不良因子として、強迫性障害合併、アルコール・薬物依存、精神病症状が示唆された。
Murakoshi A,Mitsui N,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I,Inoue T*:Personality traits mediate the association between perceived parental bonding and well-being in adult volunteers from the community,BioPsychoSocial Medicine 14,28-37,2020 402例の一般成人を対象に質問紙法検査を行い、幼少期における親の愛着が成人後の子の主観的ウェルビーイングにどう影響するかについて分散構造解析を用いて検討した。幼少期における親の適切なケアは、成人後のウェルビーイングを直接的に、また損害回避、報酬依存、自己志向性などの性格特性を介して間接的に増加させることが示唆された。一方、親の過保護は、成人後のウェルビーイングに直接影響しないが、性格特性を介してウェルビーイングを間接的に低下させた。
Takase T,Nakamura A*,Miyoshi H,Koga M,Toyomaki A,Kusumi I,Kino R,Konishi Y,Kiso Y,Atsumi T:Effects of Palmaria palmata on lipid metabolism and glycemic control in participants with hypercholesterolemia in a randomized double-blind placebo-controlled trial,Phytotherapy research 34(9),2303-2312,2020 本研究は医学研究院免疫・代謝内科学教室との共同研究である。紅藻類であるダルスの代謝への影響についてほとんど研究が行われてこなかった。本研究は健常者を対象にダルス粉末のカプセル状を用いて、プラセボ剤との無作為割付並行群間試験を行った。介入期間は8週間とした。血液生化学指標を評価項目とした。8週後ではプラセボ群と有意差は見られなかったが、サブ解析では女性群では8週後で血清中性脂肪が有意に低下した。このことから、紅藻類ダルスの摂食習慣は生活習慣病(脂質異常症や糖尿病など)の予防に寄与することが示された。
Koga M*,Toyomaki A,Kiso Y,Kusumi I:Impact of a Rice-Centered Diet on the Quality of Sleep in Association with Reduced Oxidative Stress: A Randomized, Open, Parallel-Group Clinical Trial,Nutrients 12(10),2926,2020 食生活が精神的健康と関連する。我々は米と味噌の組み合わせが心身の健康と関連していることを明らかにしてきた。本研究では、米食をベースとした食事の摂取が心身の健康に影響を与えるという仮説を立て、米を用いた食事介入の影響を検討した。60名の健常者を対象とした無作為化非盲検並行群間比較臨床試験を実施し、米食を中心とした食事習慣と、米食を控える食事習慣のいずれかに割付け、2ヶ月間介入した。結果について、睡眠の質は米食介入群で有意な改善を示した。さらに、無米食群と比較して、米食群では血液中の酸化ストレスレベルが低下していた。これらのことから、米中心の食事を摂取することで酸化ストレスの低下を通して、睡眠の質を向上させる可能性を示唆している。
Kusumi I*,Inoue S,Baba K,Nosaka T,Anzai T:A propensity score matching analysis for cardio metabolic risk of antipsychotics in patients with schizophrenia using Japanese claims data,BMC Psychiatry 20(1),584,2020 非定型抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓メタボリック疾患のリスクを検討する目的で、日本のレセプトと健診のデータベースを用いて検討を行った。冠動脈疾患発症リスクを予測する吹田スコアは、治療開始1年後において、非定型抗精神病薬服用群では、それを服用していない群と比較して有意差は認められなかったが、血清総コレステロール値とBMIについては前者で有意に高値を示した。
Oka M*,Ito K,Koga M,Kusumi I:Changes in subunit composition of NMDA receptors in animal models of schizophrenia by repeated administration of methamphetamine,Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry 103,109984,2020 細胞外ドパミン濃度を上昇させるメタンフェタミン2.5 mg/kgをラットに反復投与して統合失調症の動物モデルを作成し、前頭前野、海馬及び線条体のNMDA受容体サブユニットの遺伝子とタンパク発現量について実験的に検討した。その結果、脳の領域により異なるサブユニットの遺伝子発現量の低下とGluN1タンパク発現量の低下を認めた。また、これらの変化はGluN1合成能や細胞内輸送能の差異によるものと考えられた。本研究は、当教室で提唱してきた、統合失調症の脳内病態進行の背景に細胞外ドパミン濃度上昇からグルタミン酸神経系の機能低下が存在する「dopamine to glutamate仮説」の機序の一部を説明する重要な所見であると考えられた。
Hori H,Itoh M,Matsui M,Kamo T,Saito T,Nishimatsu Y,Kito S,Kida S,Kim Y*:The efficacy of memantine in the treatment of civilian posttraumatic stress disorder: an open-label trial,European Journal of Psychotraumatology 12(1),1859821,2021 N-methyl-D-aspartate受容体拮抗薬であるmemantineの心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する有効性と安全性を検討するため、12週間の非盲検臨床試験を実施した。DSM-IV PTSDの成人患者13名に対してmemantineの5mg/日より漸増した。主要評価項目は、PTSDの診断と重症度でありPDS(Posttraumatic Diagnostic Scale)で評価した。平均PDSトータルスコアはベースライン時の32.3±9.7点からエンドポイント時の12.2±7.9点に減少し、統計的に有意な効果が認められた。6名の患者がPTSDの診断基準を満たさなくなった。
Adachi M*,Takahashi M,Hirota T,Shinkawa H,Mori H,Saito T,Nakamura K:Distributional patterns of item responses and total scores of the Patient Health Questionnaire for Adolescents in a general population sample of adolescents in Japan,Psychiatry and Clinical Neurosciences 74(11),628-629,2020 日本における小児期のうつ病のスクリーニング尺度「PHQ-A」の標準化のために青森県弘前市の小中学生8003名にPHQ-Aを配布した。男子3850名、女子3915名から回答が得られた。PHQ-Aの総得点については、0点が21.6%、0〜4点が63.4%、PHQ-9のカットオフスコア4である10点が11.1%であった。これらの重症度分布は、青年期におけるうつ病の有病率を報告した「National Comorbidity Survey - Adolescent Supplement」で報告された知見と全体的に一致しており、18歳までに青年期の約11%がうつ病性障害に罹患していることが明らかになった。
Saito T,Yamashita Y,Tomoda A,Okada T,Umeuchi H,Iwamori S*,Shinoda S,Mizuno-Yasuhira A,Urano H,Nishino I,Saito K:Using the drug repositioning approach to develop a novel therapy, tipepidine hibenzate sustained-release tablet (TS-141), for children and adolescents with attention-deficit/hyperactivity disorder,BMC Psychiatry 20(1),530,2020 アスベリン®(tipepidine hibenzate)は、日本では50年以上前から鎮咳剤として使用されている。本研究では、Tipepidineの徐放性錠剤であるTS-141をドラッグ・リポジショニング・アプローチによりADHD治療薬として開発した。ADHDと診断された6~17歳の小児および青年を対象とした8週間の治療、無作為化、並行群、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。ADHD RS-IV-Jスコアの変化については、プラセボ投与群とTS-141投与群の間に有意な差は認められなかった。
Takano K,Watanabe H,Yagyu K,Shimojo A,Boasen J,Murakami Y,Shiraishi H,Yokosawa K*,Saito T:Semi-automated brain responses in communication: A magnetoencephalographic hyperscanning study,Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society 2020,2893-2896,2020 対面式のコミュニケーションは、情報、思考、感情を相手に継続的にフィードフォワードしたり、フィードバックしたりする相互的なものである。このような相互性の基盤となる神経処理を正確に評価するためには、両者の脳活動を同期して同時に記録する必要がある。本研究では、光ファイバーで接続された2台の脳磁図(MEG)を用いて、非言語的な対面式のコミュニケーションの背後にある神経処理を8組の健常ペア―を対象に調べた。
Suyama S,Yagyu K,Araki A,Miyashita C,Itoh S,Minatoya M,Yamazaki K,Tamura N,Nakai A,Saito T,Kishi R*:Risk factors for motor coordination problems in preschool-age children,Pediatrics International 2020 62(10),1177-1183,2020 自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)の併存例が有する行動面、感情面の問題を評価するため、6-12歳の男児102人を、ASD 、ADHD併存(N = 39)、ASD(N = 37)、およびADHD (N = 25)に群化して、比較検討を行った。SDQを評価尺度に用いたところ、ASD、ADHD併存例では、TDSが高く、また、行為、多動衝動性、向社会的行動の得点に有意差を認めた。
Iida H,Iga J,Hasegawa N,Yasuda Y,Yamamoto T,Miura K,Matsumoto J,Murata A,Ogasawara K,Yamada H,Hori H,Ichihashi K,Hashimoto N,(43名略):Unmet needs of patients with major depressive disorder - Findings from the 'Effectiveness of Guidelines for Dissemination and Education in Psychiatric Treatment (EGUIDE)' project: A nationwide dissemination, education, and evaluation study,Psychiatry and Clinical Neurosciences 74(12),667-669,2020 2016年から2018年の間にEGUIDEプロジェクトに参加した84施設における、初回参加年の4−9月(講習受講前)の間に病棟から退院した大うつ病患者1283名の退院時処方について検討した。ガイドラインで推奨されている、抗うつ薬の単剤処方については、データ全体で平均58.6%、中央値59.4%であった。抗うつ薬単剤処方の割合は施設により20%から100%まで大きな差があった。抗不安薬、睡眠薬を処方されていない患者は、全体の25.1%に過ぎなかった。抗うつ薬の多剤併用や、抗不安薬、睡眠薬の長期処方を減らす、さらなる努力が必要と考えられた。
Ichihashi K,Hori H,Hasegawa N,(27名略),Hashimoto N,Iga J,Ogasawara K,Yamada H,Watanabe K,Inada K,Hashimoto R:Prescription patterns in patients with schizophrenia in Japan: First-quality indicator data from the survey of "Effectiveness of Guidelines for Dissemination and Education in psychiatric treatment (EGUIDE)" project,Neuropsychopharmacology Reports 40(3),281-286,2020 2016年にEGUIDEプロジェクトに参加した44施設における、初回参加年の4−9月(講習受講前)の間に病棟から退院した統合失調症患者1164名の退院時処方について検討した。全体の43%の患者が抗精神病薬を多剤併用していた。また他の向精神薬についても、抗うつ薬8%、気分安定薬37%、抗不安薬・催眠薬68%と、相当程度の患者が併用されていた。ガイドラインでは、抗精神病薬を単剤で使用すること、興奮に対する短期間の抗不安薬の併用などの特殊なケースを除き他の向精神薬も使用しないこと、が推奨されている。これらの推奨に沿った治療となるよう、さらなる努力が必要と考えられた。
Hashimoto N,Takahashi K,Fujisawa D,Aoyama K,Nakagawa A,Okamura N,Toyomaki A,Oka M,Takanobu K,Okubo R,Narita H,Kitagawa K,Udo N,Maeda T,Watanabe S,Oyanagi Y,Miyazaki A,Ito K,Kusumi I:A pilot validation study of the Japanese translation of the Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS),Asian Journal of Psychiatry 54,102210,2020 The Structured Clinical Interview for the PANSS (SCI- PANSS)と,the Informant Questionnaire for the PANSS (IQ-PANSS)を備えたPANSSの完全版は日本若手精神科医の会によって翻訳され、広く活用されているが、信頼性、妥当性の検討はまだ行われていなかった。 我々は北海道大学病院精神科神経科の統合失調上患者10名に対して、IQ-PANSSを取得したのち、SCI-PANSSを用いたインタビューを行い、その様子をビデオに収めた。9名の精神科医と1名の実験助手が得られたデータを元に患者をPANSSで評価した。その結果、日本語版PANSSは、内部整合性(Cronbachのα=0.89)、評価者間信頼性(ICC=0.97)、テスト再検定信頼性(r=0.94、p<0.001)に優れていた。PANSSの陽性症状とSAPSの合計スコア(r=0.78, p<0.001)およびSANSの合計スコア(r=0.39, p<0.001)との相関、およびPANSSの陰性症状とSANSの合計スコア(r=0.81, p<0.001)およびSAPSの合計スコア(r=0.24, p=0.232)との相関は、良好な収束妥当性および識別妥当性を有していた。
Hashimoto N,Michaels TI,Hancock R,Kusumi I,Hoeft F:Maternal cerebellar gray matter volume is associated with daughters' psychotic experience,Psychiatry and Clinical Neurosciences 74(7),392-397,2020 小児期、青年期の、精神病様体験(PE)は精神病スペクトラム障害と生物学的および環境的危険因子を共有している。親の神経解剖学的変化は、PEの生物学的基盤を反映していると考えられ、子のPEを予測する可能性がある。主要な神経精神疾患の診断を受けていない35家族から、母娘14人、母子17人、父娘12人、父子16人ペアを調査した。子供のPEは、the Atypicality subscale of the Behavior Assessment System for Children - 2nd Edition, Self-Report of Personality form(BASCaty)用いて評価し、親の灰白質体積とその子孫のBASCatyスコアの間の相関関係を調べた。その結果、母親の小脳灰白質体積は、娘のBasicatyスコアと正の相関があった。父方の灰白質体積と子孫の灰白質体積とBASCatyスコアとの間には有意な相関は認められなかった。結論:精神病における親由来の効果を拡張すると、母親の神経解剖学的変化は娘のPEと関連していた。この性特異的な世代間効果の性質は不明であるが、母体から伝達された遺伝子は、小脳の発達とPEの発症に関連している可能性がある。
石原可愛,三井信幸,横尾早苗,一條理絵,朝倉聡,横田卓,橋野聡:全国大学保健管理施設における留学生対応実態調査による今後の支援方法の明確化(第二報),CAMPUS HEALTH 57,341-343,2020
石原可愛,三井信幸,横尾早苗,一條理絵,朝倉聡,横田卓,橋野聡:全国大学保健管理施設における留学生対応実態調査による今後の支援方法の明確化(第三報),CAMPUS HEALTH 57,344-346,2020
Sawamura D,Narita H,Hashimoto N,Nakagawa S,Hamaguchi H,Fujima N,Kudo K,Shirato H,Tha KK:Microstructural Alterations in Bipolar and Major Depressive Disorders: A Diffusion Kurtosis Imaging Study,Journal of Magnetic Resonance Imaging 52(4),1187-1196,2020 BD患者16名、MDD患者19名、年齢と性別をマッチさせた健康なボランティア20名において、脳の主要な拡散尖度イメージング(DKI)指標を3群間で比較し、臨床変数(すなわち、YMRS、17-HDRSなどとの相関を調べた。DKIは広範な微細構造変化を明らかにした。BD患者ではYMRS、MDD患者では17-HDRSとの間に強い相関が認められた。DKIの指標は、2つの疾患を区別するため、あるいは疾患の重症度を反映するために有用である可能性がある。
Toyoshima K*,Inoue T,Shimura A,Masuya J,Ichiki M,Fujimura Y,Kusumi I:Associations between the depressive symptoms, subjective cognitive function, and presenteeism of Japanese adult workers: a cross-sectional survey study,BioPsychoSocial Medicine 14,10,2020 パス解析により、成人労働者477名における、抑うつ症状、主観的認知機能、およびプレゼンティーイズムの関係について検討した。主観的認知機能は、抑うつ症状のプレゼンティーイズムに対する影響を、有意に媒介した。成人労働者において、抑うつ症状と関連したプレゼンティーイズムに対処する際には、主観的認知機能の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Does Subjective Cognitive Function Mediate the Effect of Affective Temperaments on Functional Disability in Japanese Adults?,Neuropsychiatric Disease and Treatment 16,1675-1684,2020 構造方程式モデリングにより、一般成人ボランティア544名における、感情気質、抑うつ症状、主観的認知機能、および社会機能の関係について検討した。主観的認知機能は、感情気質および抑うつ症状の、社会機能に対する影響を、それぞれ有意に媒介した。本研究により、感情気質および抑うつ症状と関連した社会機能障害に対処する際に、主観的認知機能の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Associations among childhood parenting, affective temperaments, depressive symptoms, and cognitive complaints in adult community volunteers,Journal of Affective Disorders 276,361-368,2020 構造方程式モデリングにより、一般成人ボランティア490名における、養育環境、感情気質、抑うつ症状、および主観的認知機能の関係について検討した。感情気質は養育環境の主観的認知機能に対する影響を有意に媒介し、抑うつ症状は感情気質の主観的認知機能に対する影響を有意に媒介した。養育環境の主観的認知機能に対する影響を検討する際には、感情気質と抑うつ症状の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Tanabe H,Kusumi I:Structural equation modeling approach to explore the influence of childhood maltreatment in adults,PLoS One 15(10),e0239820,2020 構造方程式モデリングにより、一般成人ボランティア556名における、幼少期ストレス、抑うつ症状、主観的認知機能、および社会機能の関係について検討した。抑うつ症状および主観的認知機能は、幼少期ストレスの社会機能に対する影響を有意に媒介した。本研究により、幼少期ストレスと関連した社会機能障害に対処する際に、抑うつ症状および主観的認知機能の媒介作用を評価することが臨床上有用と考えられた。
Toyoshima K*,Toyomaki A,Miyazaki A,Martinez-Aran A,Vieta E,Kusumi I:Associations between cognitive impairment and P300 mean amplitudes in individuals with bipolar disorder in remission,Psychiatry Research 290,113125,2020 双極性障害症状寛解期の患者33名を対象として、事象関連電位(P300)、客観的認知機能、および主観的認知機能の関係について横断的に検討した。スピアマンの順位相関分析により、P300平均振幅と客観的認知機能との間で有意な相関を認めたが、P300平均振幅と主観的認知機能との間では有意な相関を認めなかった。したがって、主観的認知機能よりも客観的認知機能のほうが、事象関連電位と関連する可能性が示唆された。
Toyoshima K*,Inoue T,Kameyama R,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:BIS/BAS as moderators in the relationship between stressful life events and depressive symptoms in adult community volunteers,Journal of Affective Disorders Reports 3,100050,2021 階層的重回帰分析により、一般成人ボランティア286名の抑うつ症状に対する、BIS/BASとライフイベントとの交互作用について検討した。BISとライフイベントとの間では、有意な交互作用を認めなかったが、BASと否定的なライフイベントとの間で、抑うつ症状に対する有意な負の交互作用を認めた。本研究により、BASは、否定的なライフイベントの抑うつ症状に対する影響を減弱する可能性が示唆された。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Interaction between childhood parental bonding and affective temperaments on adulthood depressive symptoms,Journal of Affective Disorders Reports 3,100056,2021 階層的重回帰分析により、一般成人ボランティア548名の抑うつに対する、幼少期の養育環境と感情気質との交互作用について検討した。発揚気質は、父親の過保護が成人期の抑うつに与える影響を減弱した。母親の養護は、抑うつ気質、焦燥気質、循環気質、および不安気質が、成人期の抑うつに与える影響を減弱した。成人期の抑うつに対処する上で、幼少期の養育環境と感情気質との交互作用を考慮することは、臨床上有用と思われた。
Toyoshima K*,Kako Y,Toyomaki A,Shimizu Y,Tanaka T,Nakagawa S,Inoue T,Martinez-Aran A,Vieta E,Kusumi I:Associations between cognitive impairment and illness awareness in fully remitted bipolar outpatients,Psychiatry Research 296,113655,2021 双極性障害症状寛解期の通院患者27名を対象として、主観的および客観的認知機能障害と現在の病識との関係について、横断的に検討した。スピアマンの順位相関分析により、主観的認知機能障害と現在の服薬による効果への自覚、客観的認知機能障害と現在の精神障害についての自覚が、それぞれ有意に相関した。双極性障害症状寛解期において、主観的認知機能障害と客観的認知機能障害では、関連する病識が異なる可能性が示唆された。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Affective temperaments moderate the effect of insomnia on depressive symptoms in adult community volunteers,Journal of Affective Disorders 282,726-31,2021 階層的重回帰分析により、一般成人ボランティア525名の抑うつ症状に対する、不眠と感情気質との交互作用について検討した。循環、抑うつ、および不安気質は、不眠との間で有意な正の交互作用を認めた。発揚気質は、不眠との間で有意な負の交互作用を認めた。本研究により、循環、抑うつ、および不安気質は、不眠の抑うつに対する影響を増強し、発揚気質は減弱する可能性が示唆された。
Toyoshima K*,Inoue T,Masuya J,Fujimura Y,Higashi S,Kusumi I:Affective temperaments and functional disability modulate depressive symptoms in adulthood,Journal of Affective Disorders Reports 4,100108,2021 階層的重回帰分析により、一般成人ボランティア558名における、抑うつに対する感情気質と機能障害との交互作用、及び、機能障害に対する感情気質と抑うつとの交互作用について検討した。循環気質および不安気質と機能障害との間で、抑うつに対する有意な正の交互作用を認め、発揚気質と機能障害との間で、抑うつに対する有意な負の交互作用を認めた。感情気質と抑うつとの間で、機能障害に対する有意な交互作用を認めなかった。
Udo N,Hashimoto N*,Toyonaga T,Isoyama T,Oyanagi Y,Narita H,Shiga T,Nakagawa S,Kusumi I:Apathy in Alzheimer’s Disease Correlates with the Dopamine Transporter Level in the Caudate Nuclei,Dementia and Geriatric Cognitive Disorders Extra 10(2),86–93,2020 本研究では大脳基底核ドパミン神経機能と、アルツハイマー病(AD)におけるアパシー発現との関連を調査した。AD患者19名を対象とし、ドパミン神経機能を123I-FP-CIT-SPECTで評価し、アパシー評価尺度の点数との関連を検討した。結果,左尾状核で有意な逆相関,右尾状核では有意傾向のある逆相関を認めた。以上よりアパシーの病理学的基盤としてドパミン神経系障害が関与する可能性が考えられた。
Ishikawa S,Kobayashi M*,Hashimoto N,Mikami H,Tanimura A,Narumi K,Furugen A,Kusumi I,Iseki K:Association Between N-Desmethylclozapine and Clozapine-Induced Sialorrhea: Involvement of Increased Nocturnal Salivary Secretion via Muscarinic Receptors by N-Desmethylclozapine,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 375(2),376-384,2020 臨床研究において,夜間の流涎症の重症度とN-デスメチルクロザピン(NDMC)の血液・唾液中濃度が強い相関性を示すことを明らかにした。基礎研究では,流涎症を発現するモデル動物を開発し,流涎症発現時にNDMCの血液・唾液腺内濃度が高値であることを明らかにした。唾液腺培養細胞を用いた検討では,NDMCが流涎症の誘発反応である細胞内のCa2+濃度上昇を示し,この反応がムスカリン受容体遮断薬によって阻害されることを明らかにした。
Yamada T*,Ishikawa S,Ishiguro N,Kobayashi M,Iseki K:Evaluation of Daptomycin-Induced Cellular Membrane Injury in Skeletal Muscle,Biological and Pharmaceutical Bulletin 43(9),1338-1345,2020 臨床研究では、抗MRSA薬ダプトマイシン(DAP)の投与と骨格筋毒性の関係を評価した。DAPを静脈内投与された38例の患者のうち、5例でクレアチンホスホキナーゼ(CPK)値の上昇が観察された。CPK上昇群のDAPの血漿トラフ濃度は、正常群よりも有意に高かった。基礎研究では、ヒト横紋筋肉腫細胞を用いた検討において、DAPが細胞の生存率を低下させ、膜損傷を増加させることを示した。両研究からDAPは骨格筋毒性を有する可能性が示された。
Otsuka K,Egawa K,Fujima N,Kudo K,Terae S,Nakajima M,Ito T,Yagyu K,Shiraishi H*:Reinterpretation of magnetic resonance imaging findings with magnetoencephalography can improve the accuracy of detecting epileptogenic cortical lesions,Epilepsy & Behavior 114(Part A),107516,2021 磁気共鳴画像(MRI)所見読影に脳磁図(MEG)が器質的病変に起因する難治性てんかんの診断補助に有用か検討した。MEGクラスターを有し,最初のMRI所見で器質的病変が陰性と解釈されたてんかん患者51名を対象として3名の認定放射線技師がMEG所見を参考にしてMRI所見を再読影した。局在関連てんかん患者51名のうち18名(35.2%)において,少なくとも1名が異常を発見することができた。
Yamawaki K*,Ishitsuka K,Suyama S,Suzumura S,Yamashita H,Kanba S:Clinical characteristics of boys with comorbid autism spectrum disorder and attention deficit/hyperactivity disorder,Pediatrics International 62(2),151-157,2020 前向きコーホート研究である「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」の参加者のうち、5歳に達した4,851人の児を対象とし、3,369人が質問紙に全て回答した。DCDQ日本語版により児の協調運動の評価を行い、協調運動の問題の有無で2群化した。2群間に有意差を認めた変数を調整因子に含めて多変量ロジスティック回帰を行ったところ、児の性別(男児)、母の妊娠初期の喫煙が、協調運動の問題を有するリスクを有意に高めた。