令和2年度研修医

初期研修医
木村 憲一

私は学生時代から卒業後は精神科医として研鑽を積んで行きたいと考えていたため、初期研修医1年目に道内の市中病院で内科・外科・小児科・産婦人科・麻酔科・救急科等の必須診療科の研修を終え、初期研修医2年目の11ヶ月間、北大精神科で研修させて頂きました。残りの1ヶ月は地域医療研修病院の脳神経外科で神経所見の取り方や脳画像の読影、脳卒中の初期対応等について勉強させて頂きました。

北大精神科では児童思春期症例から老年期症例まで、また、的確な薬物療法が治療のカギとなる症例からじっくり時間をかけた精神療法が回復のために必要不可欠な症例まで、幅広い症例を経験させて頂き、大変有意義な1年になりました。研修医が主体的に治療に関わることができ、担当患者の診断や治療方針については直属の上級医だけではなく、統合失調症・気分障害・認知症・緩和医療・摂食障害・てんかん・小児精神医学等、それぞれの分野を専門とする指導医の先生に気軽に相談できる体制が整っており、非常に質の高い研修が受けられたと感じております。精神科研修の同期も非常にフレンドリーで思慮深い先生が多く、業務以外の会話を通してお互いのパーソナリティを理解し合い、人格を高め合うことができたのではないかと考えております。

精神科医にとって患者さんとの会話はそれ自体が診断・治療的な意味を持つため、その重要性については言うまでもございませんが、医療者間のコミュニケーションにも十分心がける必要性があることを実感しました。担当患者と実際に面接を行い、直接治療に関わっているのは主治医・担当医のみなので、鑑別診断や治療方針について相談する際にはその患者さんの状態をできるだけ詳細に描写する必要があります。特に精神疾患は血液所見や画像所見などの客観的なデータで鑑別診断や病状の経過がわからない場合が多いため、精神科医として標準的な感覚を持ち、担当患者の状態について論理的にわかりやすく伝える技術も大事です。北大精神科では週1回の新患紹介、週2回の病棟カンファ、週1回のリエゾンカンファがあり、そこで自分の担当患者についてプレゼンし、上級医や研修医・専攻医の質問に答えることで、医療者間のコミュニケーションスキルを磨き上げることができ、また、自分が現在知っていることと知らないことについて客観的に振り返ることができました。

精神医学的現在症の指導が手厚いのも北大精神科の特徴だと思います。研修開始後まもなく現在症の書き方の講義があり、外来初診患者の現在症については診察が終わった直後に指導医による添削が行われます。入院患者の場合は入院中に主治医による現在症の指導があり、カンファを通して複数の指導医による指摘を頂くことが可能です。精神医学的現在症は精神科独自の言語とも言えるため、精神科医として最初の1年に現在症の書き方について濃厚な指導を受けたのはきっと今後のための大きな礎となると考えております。北大精神科では1年間の研修が終わりかける頃に卒業発表として指導医とペアを組んで精神医学的に価値のある症例報告や北大精神科での1年間の間に行った臨床研究の結果について発表する機会が設けられます。この卒業発表は今後の学会発表や論文作成のための基礎スキルを磨くことができる北大精神科の素晴らしい伝統だと思います。私も普段から興味のあった分野の最新の論文を参考にし、北大精神科のデータを利用して臨床研究に関わることができました。学生時代に勉強した医学統計の教科書を読み直し、統計の基本や統計ソフトの使い方を復習することもできました。

今、振り返ってみても本当に充実した1年間だったと実感しております。これからも北大精神科で研修させて頂いた経験を日々の臨床に生かしていけるように頑張りたいと思います。