平成28年度研修医
後期研修医
秋山 久
私は医師3年目に後期研修医として北海道大学病院精神科神経科で研修をしました。研修の実態は当HP、諸先輩方が書かれていることに相違なく、私自身「こんなに恵まれた環境でいいのかな」となんだか申し訳なくなるほど充実した1年でした。感想はほぼこの一言に尽きるので、詳細は他の方に譲ることとして、私は何かのご縁でこのHPを見てくださった学生の方や初期研修医の方などが北大精神科での研修を選ぶまでに悩まれるであろう2つの点について、私見、感想を交えつつ自由気ままに?書いていこうと思います。
1.何科になるか?(精神科医になっていいのか?)
精神科に興味を持つ理由はさまざまかと思いますが、私は福井県立病院という地域の中核病院で初期研修を行い、身体管理や救急医療、また地域医療にも興味を持ちました。最終的な進路選択にあたってはかなり悩みましたが、患者さんの生活背景なども考慮した全体を俯瞰した医療を行いたいという希望から精神科を選びました。日常臨床は忙しく、臓器別の身体科では場合によっては患者さん個々の背景まで目を配る余裕がなくなる可能性もありますが、精神科では患者さんの生まれ育ちや家族背景、生活状況などを把握せずには診断も治療も成り立たないので、「病気を見て患者を診ない」といったことが起きにくいように思います。また精神科に「なる」という選択にあたって、逆に内科外科などのいわゆるメジャー科に「ならない」という選択に悩まれる方もいるかと思いますが、精神科医は患者さんのすべての悩みの窓口となることが多く、身体科の知識もフル活用することが求められます。心と体はそう簡単に2分割できるものでもありませんし、この1年も初期研修で得た知識はまったく無駄になりませんでした。専門科の知識を備えつつ、プライマリケアの知識も活用でき、さらに患者さんの話を聞くことも比較的得意となると、精神科医もなかなか魅力的だと思いませんか? 最後に「精神科の先生って変わってそう」とか「本当に医学をしているの?」といった本質ではないけれど、でもどうしても進路選択の妨げになりがちなネガティブなイメージは北大精神科の見学や研修を通して、すっかり払拭されるのでご安心を。
2.どこで専門の研修をするか?(北大に入って大丈夫か?)
当初私は出身大学に入局させていただこうかと考えていましたが、たまたま地元の北海道、このHPを見たところ、「随分恵まれた環境かも!」と思い、帰省ついでに北大精神科を見学することにしました。そこで出会った先生方があまりに普通で(いろいろ語弊がありますが笑)、常識的でバランスのとれた方々ばかりであることがなにより精神科を選ぶうえでは心強かったです。またどの科であれ教育は重要ですが、一般に後期研修医という身分でここまで教育を受けられるというのはなかなか稀有なことに思います。精神科という曖昧模糊に思われがちな科だからこそ、臨床と研究の裏付けもあり、胸を張って医療ができる環境で専門科をスタートするのは、将来的にどんな働き方をする/したいにせよ、重要なことではないでしょうか。
皆様それぞれ悩むポイントは違うかもしれませんが、一例として参考にしていただければ幸いです。大きな決断ほど、最終的に理屈でなく直感が物を言うというのも真実かと思いますし、このHPをたまたま見てくださったご縁から、一緒に働ける日を心から楽しみにしています。