平成24年業績 論文

1.学術論文

  • Inoue T, Honda M, Kawamura K, Tsuchiya K, Suzuki T, Ito K, Matsubara R, Shinohara K, Ishikane T, Sasaki K, Boku S, Fujisawa D, Ono Y, Koyama T:"Sertraline treatment of patients with major depressive disorder who failed initial treatment with paroxetine or fluvoxamine.", Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.38, 223-227, (2012)*
    SSRIが無効な場合に他のSSRIに変更するといううつ病の治療方法が最近いくつかのガイドラインでも推奨されている。一見不合理な治療選択のように思われるが、最近の薬理研究により各SSRIはセロトニン再取り込み阻害作用以外の異なる作用を有することが知られており、薬理的には不合理とはいえない。本研究では、fluvoxamineあるいはparoxetineで十分に改善しないうつ病患者で、これらのSSRIからsertralineに切り替えるという24週間のオープン試験を行った。その結果、8週までで44%に反応がみられ、その効果は24週まで続いた。」
  • Inoue T, Tanaka T, Nakagawa S, Nakato Y, Kameyama R, Boku S, Toda H, Kurita T, Koyama T:"Utility and limitations of PHQ-9 in a clinic specializing in psychiatric care.",BMC Psychiatry.12, 73, (2012)*
    PHQ-9はうつ病の自記式スクリーニングツールとして米国で開発され、わが国でもプライマリ・ケアでは高い感度と特異度(0.84と0.95)が報告されています。しかし、当科で行った検討では、アルゴリズム診断では偽陽性が多く生じ、感度・特異度ともに劣ることが分かりました(0.78と0.67)。一方、PHQ-9スコア(10点以上)を用いると、特異度は低いものの(0.50)、高い感度(0.94)が得られた。PHQ-9は「大うつ病性障害」のスクリーニングツールではなく、「大うつ病エピソード」のスクリーニングツールであることに留意すべきである。」
  • Kohno K, Hoaki N, Inoue T, Nakai Y, Toyomaki A, Yasuo Araki Y, Hatano K, Terao T:"Latitude Effect on Bipolar Temperaments.",J Affect Disord.142, 53-56, (2012)*
  • Masuda T, Nakagawa S, Boku S, Nishikawa H, Takamura N, Kato A, Inoue T, Koyama T:"Noradrenaline increases neural precursor cells derived from adult rat dentate gyrus through beta2 receptor.",Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatr.36, 44-51, (2012)*
  • Song N, Nakagawa S, Izumi T, Toda H, Kato A, Boku S, Inoue T, Sakagami H, Li X, Koyama T:“Involvement of CaMKIV in neurogenic effect with chronic fluoxetine treatment.",The International Journal of Neuropsychopharmacology.14, 1-10, (2012)
  • Kitaichi Y, Inoue T, Nakagawa S, Boku S, Kato A, Kusumi I, Koyama T:"Effect of triiodothyronine (T3) augmentation of acute milnacipran administration on monoamine levels: an in vivo microdialysis study in rats.",Neuropsychiatr dis treat.8, 501-507, (2012)*
    Triiodothyronine (T3)併用による抗うつ効果増強作用の機序を脳内微小透析法を用いてラットで検討した。結果:T3による抗うつ効果増強には細胞外セロトニン濃度の増加が関与していること、T3の作用には脳の部位特異性が見られること、T3の効果はU-shapeであることを確認した。」
  • Kitaichi Y, Inoue T, Nakagawa S, Boku S, Koyama T:“Effects of combined treatment with clorgyline and selegiline on extracellular noradrenaline and serotonin levels.",Acta Neuropsychiatrica.24(6), 369-373, (2012)*
    MAO-A inhibitorとMAO-B inhibitorの併用はMAO-A inhibitor単独投与と比べてラットの内側前頭前野の細胞外セロトニン、ノルアドレナリン濃度をさらに増加させた。このことは、MAO-A阻害作用ばかりでなくMAO-B阻害作用も抗うつ効果に関与している可能性を示唆している。」
  • Boku S, Nakagawa S, Toda H, Kato A, Takamura N, Omiya Y, Inoue T, Koyama T: "ROCK2 regulates bFGF-induced proliferation of SH-SY5Y cells through GSK-3β and β-catenin pathway.",Brain Res.1492, 7-17, (2013)*
  • Izumi T, Boku S, Shinmin W, Inoue T, Konno K, Yamaguchi T, Yoshida T, Matsumoto M, Watanabe M, Koyama T, Yoshioka M:"Retrieval of conditioned fear activates the basolateral and intercalated nucleus of amygdala.",J Neurosci Res.89, 773-790, (2011)*
  • Song N, Boku S, Nakagawa S, Kato A, Toda H, Takamura N, Omiya Y, Kitaichi Y, Inoue T, Koyama T:"Mood stabilizers commonly restore staurosporine-induced increase of p53 expression and following decrease of Bcl-2 expression in SH-SY5Y cells.", Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.38, 183-189, (2012)*
  • Tsutsui K, Kanbayashi T, Tanaka K, Boku S, et al:"Anti-NMDA-receptor antibody detected in encephalitis, schizophrenia, and narcolepsy with psychotic features.", BMC psychiatry.12, 37, (2012)*
  • Takamura N, Masuda T, Inoue T, Nakagawa S, Koyama T:"The effects of the co-administration of the α1-adrenoreceptor antagonist prazosin on the anxiolytic effect of citalopram in conditioned fear stress in the rat.", Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.39, 107-111, (2012)*
    アドレナリンα1受容体拮抗薬プラゾシンが細胞外セロトニン濃度上昇抑制作用することが報告されている。本研究では、恐怖条件付けモデルを用いて、プラゾシンがシタロプラムの抗不安作用に及ぼす影響を検討した。その結果、プラゾシンは、行動量に影響を与えることなくシタロプラムのフリージング抑制作用を減弱させた。このことから、アドレナリンα1受容体拮抗作用は、シタロプラムの抗不安作用を抑制することが示唆された。」
  • 宮島 真貴, 井上 貴雄, 佐藤 祐基, 久住 一郎, 傳田 健三:「小・中・高校生の自閉傾向に関する実態調査―自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いて―」, 『最新精神医学』.17(4), 364-370, (2012)*
  • Miyajima M, Toyomaki A, Hashimoto N, Kusumi I, Murohashi H, Koyama T:"Discrepancy of neural response between exogenous and endogenous task switching: an event-related potentials study", Neuroreport.23(11):August 1, 642-646, (2012)*
    実行機能は精神疾患で観察される認知機能障害の1つであるが、実行機能を評価する優れた行動課題は存在しない。我々はスイッチング課題を作成して外発的な指示でルール切り替えを行う場合と、自発的にルール切り替えを行う場合の神経活動を事象関連電位で計測し、それぞれ特徴的な神経活動を得た。外発課題ではルール切り替え処理時に、内発課題ではルール切り替えに先んじて後期陽性成分の増大が観察される興味深い結果が得られた。」
  • 宮島 真貴, 橋本 直樹, 豊巻 敦人, 井上 貴雄, 加藤 ちえ, 清水 祐輔, 久住 一郎:「5症例の統合失調症患者に対する認知矯正療法の治療効果」, PT-OT-ST Channel Online Journal.2, , (2013)*

2.症例報告

  • 宇土仁木, 中川 伸, 井上 猛, 仲唐 安哉, 亀山 梨絵, 小山 司:「修正型電気けいれん療法が有効であった退行期メランコリーの1例」, 『精神医学』.54, 1043-1045, (2012)*
  • 賀古 勇輝, 清水 祐輔, 久住 一郎, 小山 司:「Aripiprazoleが奏効した強迫症状と自生思考を伴う統合失調症の1例」, 『精神科』.20, 688-692, (2012)
  • Sakurai K, Kurita T, Shiga T, Takeda Y:“A patient who misidentified all surrounding persons as her family",Epilepsy Behav.25, 162-165, (2012)*
    「脳出血後に周囲の人全てを家族と訴えた症例。症状出現時、脳血流SPECTでは右側頭葉内側の血流増加、脳波では両側前頭部-側頭部にδ派が出現していた。相貌失認は認めなかった。症状は抗てんかん薬による治療で完全に消失した。辺縁系の過剰興奮に起因する親近感の変容と前頭側頭部皮質の機能低下によって、周囲の他人に対しても強い親近感が出現したため家族と誤認したと考えた。」
  • Sakurai K, Shiga T, Kurita T, Takeda Y, Tamaki N, Koyama T:“SPECT findings during simple partial statusepilepticus", Neurology Asia.17, 147-151, (2012)*
    「単純部分発作重積状態を呈した症候性局在関連てんかんの2症例に対して、発作時の脳血流SPECT検査を行い、SISCOM解析を行った。発作重積時状態では、大脳皮質の他に大脳基底核の血流が増加しており、これが発作重積の病態生理に関係する可能性を示唆した。」
  • Matsuda N, Hashimoto N, Kusumi I, Ito K, Koyama T:"Tardive laryngeal dystonia associated with aripiprazole monotherapy.", J Clin Psychopharmacol.Apr.32(2), 297-298, (2012)

3.総説

  • 久住 一郎, 伊藤 候輝, 本田 稔, 林下 忠行, 上村恵一, 橋本 直樹, 村崎 光邦, 渥美 義仁, 門脇 孝, 小山 司:「第二世代抗精神病薬服用中の統合失調症患者における血糖モニタリングガイダンスの検討:ベースラインデータを用いた横断的検討」, 『精神経誌』, 114:881-885, (2012)
  • 久住 一郎, 小山 司:「さまざまな剤型の有用性の比較」, 『精神科臨床サービス』.12, 88-90, (2012)
  • 久住 一郎, 鈴木 克治, 小山 司:「双極性障害の診断と細胞内カルシウム・シグナリング」, 『精神経誌』.114, 821-828, (2012)
  • 井上 猛:「抗うつ薬の薬理学的特性」, 『日精協誌』. 31, 34-39, (2012)
  • 井上 猛:「双極性障害」, 『臨床精神医学』.41, 555-562, (2012)
  • 井上 猛, 稲垣芳文, 北角和浩:「双極性障害治療薬lamotrigineの作用機序」, 『臨床精神薬理』.15, 735-747, (2012)
  • 井上 猛:「不安障害の薬物療法」, 『精神神経学雑誌』.114, 1085-1092, (2012)
  • 中川 伸:「気分障害と海馬 (特集 海馬の構造・機能障害と精神疾患)」, 『分子精神医学』.12, 91-100, (2012)
  • 朝倉 聡:「社交不安障害の現在とこれから」, 『精神神経学雑誌』.114, 1056-1062, (2012)*
  • 朝倉 聡:「自閉症スペクトラムと社会不安障害」, 『児童青年精神医学とその近接領域』.53, 504-509, (2012)*
  • 田中 輝明:「双極性障害における薬物併用療法」, 『臨床精神薬理』.16, 59-67, (2013)
  • Hiroi N, Hiramoto T, Harper KM, Suzuki G, Boku S:"Mouse models of 22q11.2-associated autism spectrum disorder.", Autism:S1-001,, (2012)
  • 栗田 紹子:「心因性非てんかん発作の臨床」, 『てんかんをめぐって』.31, 28-35, (2012)
  • Toyomaki A, Murohashi H:"Salience network"dysfunction hypothesis in autism spectrum disorders.",Japanese Psychological Research.55(2),, (2013)
    「自閉症スペクトラム障害は社会認知の発達的偏奇として捉えられている。近年、前部島皮質における感覚経験の評価処理(saliency処理)が、前頭前野背外側部などが寄与する認知処理を制御していることが機能画像のネットワーク解析から明らかになりつつある。自閉症スペクトラム障害では前部島皮質の慢性的低活動により適切な認知処理の発達が阻害される可能性があり、本総説では関連する知見を紹介し仮説を述べた。」
  • 大宮 友貴, 小山 司:「内科医のための脳疾患講座61 向精神薬の適応と副作用 その1 -非定型抗精神病薬」, 『Brain Medical』.24, 284-289, (2013)
  • 大宮 友貴, 小山 司:「内科医のための脳疾患講座62 向精神薬の適応と副作用 その2 -抗うつ薬の使い分け」, 『Brain Medical』.24, 372-380, (2013)

4.解説・評論・その他

  • 樋口 輝彦, Coyle J, 西川 徹, 久住 一郎:「統合失調症:新しい治療薬の展望 ~グルタミン酸神経伝達を中心に」, 『臨床精神薬理』.15, 1573-1587, (2012)
  • 樋口 輝彦, 井上 猛, 尾崎 紀夫, 中込和幸:「抗うつ薬の適正使用を再考する(座談会)」, 『臨床精神薬理』.15, 611-623, (2012)
  • 井上 猛:「難治性うつ病はなぜ難治なのか?その解決法について(第8回セロトニン関連障害研究会研究Reports)」, 『分子精神医学』.12, 88-91, (2012)
  • 井上 猛:「最初の抗うつ薬で改善しないうつ病の治療」, 『Depression Strategy うつ病治療の新たなストラテジー』.2, 10-12, (2012)
  • 井上 猛:「抗うつ薬非反応例に対する対策:作用機序に基づいた合理的治療選択(講演紹介Depression and Panic Summer Web Conference)」, 『臨床精神薬理』.15,1735-1742 , (2012)
  • 井上 猛:「双極性うつ病の鑑別診断」, 『Bipolarコンパクトガイド』.5, 2-6, (2012)
  • 朝倉 聡:「自己臭恐怖」, 『こころの科学』.167, 50-55, (2013)
  • 田中 輝明:特集1双極スペクトラム障害-過少診断か, 過剰診断か-「過小診断の問題~双極スペクトラム概念の見地から~」, 『Depression Frontier』.10, 17-22, (2012)
  • 田中 輝明:Aripiprazole双極性障害躁症状適応追加記念学術講演会「双極性障害の診断とその重要性」, 『臨床精神薬理』.15, 2009-2015, (2012)
  • 賀古 勇輝, 北川 信樹, 小山 司:「【精神科・わたしの診療手順】心気障害」, 『臨床精神医学』.2011年増刊, 232-234, (2011)
  • 朴 秀賢, 中川 伸, 増田 孝裕, 西川 弘之, 加藤 亜紀子, 戸田 裕之, 宋 寧, 北市 雄士, 井上 猛, 小山 司:「気分安定薬が成体海馬歯状回由来神経前駆細胞に及ぼす直接作用についての検討」, 『北海道医学雑誌』.87,190, (2012)
  • 藤井 泰, 賀古 勇輝, 久住 一郎:「社交不安障害の認知機能」, 『精神科』.21(4).科学評論社.東京, 444-447, , (2012)
  • 清水 祐輔:「身体化障害」, 『臨床精神医学』40(増刊), 229-231(2011)
  • 豊巻 敦人, 久住 一郎, 小山 司:「認知機能改善薬の開発を促進する米国のプロジェクトについて」, 『Schizophrenia Frontier』.13(1), (2012)

5.著書

  • 久住 一郎, 大熊恵子:「各非定型抗精神病薬の効果と副作用の特徴:ペロスピロン塩酸塩水和物」, pp.110-118, (萱間真美, 稲田俊也, 稲垣 中:『服薬支援とケアプランに活かす 非定型抗精神病薬Q&A』, 先端医学社, 東京), (2012)
  • 井上 猛:「気分障害におけるドパミンの役割」, pp.60-74, (躁うつ病の薬理・生化学的研究懇話会:『気分障害の薬理・生化学 ~うつ病の脳内メカニズム研究:進歩と挑戦~』, 医薬ジャーナル社, 東京), (2012)
  • 井上 猛, 小山 司:「ミルタザピンの薬理学的プロファイルと作用機序」, pp.41-45, (小山 司, 樋口 輝彦:『ミルタザピンのすべて』, 先端医学社, 東京), (2012)
  • 井上 猛:「うつ病の早期発見・治療」, ,(佐藤孝一, 武田直樹, 佐藤嘉晃:『北大病院の医療健康セミナー』, 北海道新聞社, 札幌), (2012)
  • 中川 伸:「抗うつ薬と躁転」, pp.130-134, 『今日の精神疾患.治療指針』, pp.130-134, 医学書院, (2012)
  • 中川 伸, Tha KK, 小山 司:「うつ病における脳拡散テンソル画像」, pp.324-325, (『気分障害の薬理・生化学』, 医薬ジャーナル社, 東京), (2012)
  • 北川 信樹, 賀古 勇輝 監訳:「双極性障害の認知行動療法(翻訳)」, p.344(岩崎学術出版社, 東京), (2012)
  • 朴 秀賢:「気分安定薬と成体海馬神経細胞新生」, pp.125-127, (躁うつ病の薬理・生化学的研究懇話会:『気分障害の薬理・生化学 ~うつ病の脳内メカニズム研究:進歩と挑戦~』, 医薬ジャーナル社, 大阪) , (2012)
  • 戸田 裕之, 朴 秀賢, 中川 伸, 小山 司:「ラット母子分離ストレスによる成獣後の不安行動への脆弱性の分子メカニズム」, 293-297, (『気分障害の薬理・生化学』, 医薬ジャーナル社, 東京), (2012)
  • 橋本 直樹, 加藤 隆弘:「第5章 精神病性障害(翻訳)」pp.57-74, (B・キッチナー, A・ジョーム著, メンタルヘルス・ファーストエイ・ドジャパン訳, 『専門家に相談する前のメンタルヘルス・ファーストエイド:こころの応急処置マニュアル』, 創元社, 東京), (2012)
  • 橋本 直樹:「第2章 発展に関する三つの定説への疑問」, pp.33-46, (ノーマン・サルトリウス著, 日本若手精神科医の会(JYPO)訳, 『アンチスティグマの精神医学 メンタルヘルスへの挑戦』)
  • 藤井 泰:「S1双極性障害・序論, S8認知的技法」, ,(北川 信樹, 賀古 勇輝 監訳:『双極性障害の認知行動療法』(翻訳), 岩崎学術出版社, 東京), (2012)
  • 三井 信幸:「第11章 長期的な問題, 双極性障害と自己(翻訳)」, ,(北川 信樹, 賀古 勇輝 監訳:『双極性障害の認知行動療法』(翻訳), 岩崎学術出版社, 東京), (2012)