ご挨拶
精神医学分野 教授
久住 一郎(くすみ いちろう)
精神医学は、人間の身体的側面(主に中枢神経機能)から精神的側面(心理的、社会的、文化的なものを含む)に至る幅広い領域を扱います。21世紀に入り、私たちは以前にも増して、物質的な欲求よりも精神的な充足を求める傾向が増してきています。そのような社会的な変化の中で、医学ならびに医療における精神医学の重要性がますます高まってきていると考えます。
北大精神医学教室は、1928年の開講以来、精神医学と精神科医療ならびに全人的医療に貢献する多くの人材を輩出してきました。私たちの教室は、教育(人材の育成)、研究(病態の解明と新たな治療の開発)、診療(医療の充実)を3つの柱として活動を続けていますが、精神医学と精神科医療に限りない情熱をもち、それらの発展を強く願うという志を同じくする人々の集まりです。互いの在り方を尊重し、自由な雰囲気と温かな人間関係を保ち続けながら、思う存分活躍できる場を提供するのが私たち教室の伝統です。教育面では、学生や研修医をマンツーマンで懇切丁寧に、しかも体系的にバランスよく教育できるシステムが完備されています。研究面では、基礎研究と臨床研究の双方がバランスよく行われている、全国的にも数少ない教室のひとつです。臨床面では、北大病院診療科の中でも1, 2位を争う外来患者数、入院患者数を誇り、豊富な症例を経験できるばかりでなく、各領域で全国トップレベルの治療水準にあります。
私たちの使命は、基礎研究ならびに臨床研究を基盤にした精神科医療の進展を通して精神障害者の障害克服に最大限寄与することです。そのために、ビジョンとして「最高の精神科医療を提供できる最強の多職種チームを創り、治療の拠り所となるエビデンスを自ら世界に発信する過程を通して、社会に貢献できる医師を育成する」ことを目指しています。その実現のために、多職種チームによる治療の標準化とチーム力向上、精神科疾患診断のための生物学的マーカーの開発、有効で副作用の少ない新たな治療法の開発と普及、学生(卒前)・研修医(卒後)教育を通したバランスの取れた精神科医の育成、地域精神科医療への貢献の5つの目標を掲げています。これら目標の達成にむけて、私たち教室は一丸となって「急がずに、休まずに」、「Be always gentle」に歩みを進めていく所存です。
研修医の皆さんや入局を希望される方々、私たちとともに、新たな精神医学と精神科医療を築いていきませんか。新たな若い力が加わってくれることを心から期待しております。
略歴
- 1984年
- 北海道大学医学部卒業
- 1987~88年
- 国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)神経研究所 疾病研究第三部 流動研究員
- 1993年
- 医学博士取得, 北海道大学医学部助手
- 1994~95年
- カナダ・トロント大学医学部精神薬理学研究室留学
- 1999年
- 北海道大学病院 講師
- 2008年
- 北海道大学医学部 准教授
- 2012年
- 同 教授
資格・専門医など
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会指導医・専門医
- 日本医師会認定産業医
学会役員など
- 日本精神神経学会 代議員(元理事長)
- 日本統合失調症学会 理事
- 日本心身医学会 理事
- 日本神経精神薬理学会 評議員
- 日本生物学的精神医学会 理事
- 日本臨床精神神経薬理学会 理事
- 日本うつ病学会 評議員
- 日本神経化学会 評議員 など
専門
精神薬理学。統合失調症や気分障害(双極性障害)の病態研究、治療薬の作用機序研究。