統合失調症グループ

メンバー(令和6年度)

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研究内容(令和5年度)

橋本は、グループの大学院生や豊巻助教、心理士の服部、研究所助手の國峯、久保田とのチームで、科研費研究「統合失調症の陰性症状に関わる生物学的基盤の探索」および、AMED研究「日本の臨床現場で実施可能な社会認知機能検査の検討(ESCoM研究)」のデータの取りまとめを、秋山、野原、豊巻とともに進めた。またEGUIDE研究の全国多施設データから、統合失調症患者と大うつ病患者の入退院時処方の特徴をまとめ、論文に発表した。また精神疾患レジストリ研究と関係して、統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害の患者の認知機能障害と社会機能について、北大のデータをまとめて和文誌で報告したほか、レジストリデータでの解析を進めた。その他複数の多施設共同研究において論文執筆を進めている。

秋山は、大学院4年目でAMED研究「日本の臨床現場で実施可能な社会認知機能検査の検討(ESCoM研究)」の結果をまとめ、専門家パネル会議にかけ、各社会認知機能検査の推奨度の決定に至った。本研究の英語論文は令和6年2月現在under reviewを経て、minor revisionとなっており、近日中に受理されることが期待される。同研究を基礎論文として執筆した学位論文も最終審査を終えた。大学院博士課程の卒業を目指しつつ、他研究のリクルート作業や多忙な臨床業務に邁進している。

野原は大学院3年目で、橋本の指導の下、「統合失調症の陰性症状に関わる生物学的基盤の探索」に取り組んでいる。陰性症状を評価する行動課題についてのデータの集積は完了し、現在解析を行っている。また、2019年に橋本が発表した日本語版BNSS(Brief Negative Symptom Scale)について、症例数を増やした信頼性、妥当性の検証を行っている。尚、データは帯広病院の大久保亮先生が研究責任者となっているAMED研究「日本の臨床現場で実施可能な社会認知機能検査の検討」からも取得している。顔表情認知に関しては、既存のデータをもとに解析を行っており、論文化を進めている。学会発表については、第33回日本臨床精神神経薬理学会学術集会で「修正型電気けいれん療法施行後にQT延長と心尖部肥大型心筋症を認めた統合失調症の一例」、第45回日本生物学的精神医学会総会で「統合失調症患者の努力コスト分析に基づいた意思決定の行動課題に関する研究」についてポスター発表を行った。

最後に豊巻は認知機能障害に関連する複数の研究に従事した。1つはタブレット版認知機能検査の開発研究である。従来の「紙と鉛筆」式の認知機能検査は検査者の手間や道具は部屋の必要があり多くの患者で実施するのが困難であった。それを踏まえiPadで神経認知機能を包括的に評価できるアプリを開発し、妥当性を検証する研究を行っている。将来的に一般的な精神科医療機関で簡単に認知機能検査が施行できることを目指している。次に、ケモカインCCL11に着目した採血、MRI、認知機能検査を計測する研究を行っている。統合失調症の認知機能障害の神経生理、神経化学的基盤として神経炎症を促進するケモカインCCL11に着目し、末梢血CCL11濃度が高いほど、MRIで計測した全脳ミエリン鞘量の低下に寄与し、認知機能検査の成績が低下をもたらすという仮説を検証している。また、患者にノートPCを貸与し自宅で聴知覚訓練を行い事象関連電位、認知機能検査の成績を改善させるかを検証する検討も継続して行っている。

(文責:橋本 直樹)