はじめに

子どものこころの問題、精神疾患を科学的に理解する為、子どもの気分障害、ADHD、自閉スペクトラム症などの疾患に関する脳画像研究をはじめ、基礎的な研究を行っています。また子どもの精神症状および問題行動について、Child Behavior Check List(CBCL)などの質問紙を用い、子どもの精神疾患について横断的、縦断的な臨床理解を深める研究も進めております。子どもの治療に関しての臨床研究はいまだ十分ではなく、EBMに基づいたglobal standard である児童思春期精神医療を推進するために、基礎研究に加え、薬物の臨床治験や心理療法のマニュアル化と標準化の研究を併せて行っています。

研究紹介

【児童思春期における気分障害】

児童思春期の気分障害は、今まで過小診断・過小評価されてきた領域です。本部門では児童思春期の気分障害の診断および治療の標準化に関する研究を行っています。

  1. 学齢前のうつ病の診断基準の開発について
  2. 児童思春期のうつ病のスクリーニング・治療の標準化の研究
  3. 児童思春期の抗うつ薬の有効性についての研究

【児童思春期の自殺の危険因子・保護因子の解明および自殺予防】

子どもの自殺予防に必要な要因を明らかにし、子どもの自殺予防に活用できるようなシステムの構築を目指します。

【発達障害の原因究明および臨床的評価方法の確立】

発達障害の原因究明および臨床的評価方法の確立を目指し、最新の脳画像・脳機能評価方法を用いた研究で、各種発達障害のバイオマーカー探索や診断法の確率を高める研究を進めております。特に、自閉スペクトラム症の生理・認知レベルでの評価方法を確立するため、眼球運動などの客観的な指標の妥当性について検討しています。また北海道大学にある2台の脳磁計を接続し双方向でのコミュニケーション時の脳活動について研究を行っています。

ADHDの半構造化面接の作成をDIVA Foundationと行っており、成人のADHDの診断の標準化に関する研究を行っています。また、子どものADHDの診断のための半構造化面冊の作成も行っています。

【注意欠如多動症(ADHD)のお子さんへのペアレントトレーニング、心理的介入】

ADHD児童を中心にペアレントトレーニングを実践しております。H26年9月より『こころの広場ふくろうさん』ではペアレントトレーニングを行っています。また並行して子どもたちと遊びながら、行動観察および親へのフィードバックを行います。これらを通して親子関係にアプローチする心理研究を進めております。

【Dual MEGを用いたコミュニケーション研究】

2018年北海道大学内にある2台の脳磁計(MEG)同士を光ファイバを用いて接続し、双方向での映像・音声のやりとりを可能にする、ほぼ時間のずれが生じない成人間のコミュニケーション測定をできるDual MEGシステムを世界ではじめて開発しました。これにより健常者のコミュニケーションの基礎研究やコミュニケーションに障害をもつ自閉スペクトラム症や統合失調症などの疾患に関わる研究を進めています。