児童思春期精神科外来について

北海道大学病院子どものこころと発達センターでは、お子さんのこころの問題に対し、様々な視点から総合的な評価・診断を行い、患者さんにあった治療を行っています。対象となる疾患は、双極性障害、抑うつ障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、チック症、摂食障害、身体表現性障害、適応障害などです。学習における困難など、発達に関する症状やご心配もご相談ください。

症状や状況に応じて、心理療法やご家族への支援、薬物療法といった治療法をご提案しています。また地域の機関や学校などとも協力し、患者さんが治療に専念できる環境づくりにも取り組んでいます。

挿絵

初めて受診される方へ

  • 児童思春期外来は中学生までが対象です。あらかじめ電話にて予約をお取りください。
  • 当院は高度医療を提供する「特定機能病院」として厚生労働省から認定されております。そのため、原則紹介制となっておりますので、他の医療機関からの紹介状(診療情報提供書)が必要となります。
  • 紹介状は医療機関に限らず、学校の教師やスクールカウンセラーからでも構いませんので、当日忘れずにお持ちください。紹介状の宛名には「北大病院精神科神経科」の記載が必要です。
  • 問診票、質問紙をご自宅に郵送いたしますので、事前にご記入いただき、ご持参ください。また、診察当日には、以下のようなご本人の情報がわかるものがありましたらご持参ください。
    1. 母子手帳
    2. 学校の成績表
    3. 幼稚園・保育園・学校の担任との連絡帳
    4. お薬手帳
  • 初めての診察には時間を要しますので、時間に余裕を持ってお越し下さい。
  • 北大病院は学生の教育病院でもあります。学生の教育へのご協力とご理解を宜しくお願い致します。

2回目からの受診の方へ

  • 外来の診察は予約制となっております。
  • 予約の日まで時間があって、お困りのことがある場合には外来にお電話をください。
  • 相談の上で予約日時を早めたりする場合があります。緊急の受診の際には、やむを得ず待ち時間が長くなることがありますので、ご了承下さい。
  • 診察の際に外来担当医が次回の予約をお取りします。予約の変更は電話で可能です。
  • 外来担当医は、急な出張などのやむを得ない事情により変更となる場合があります。その場合、患者さんに個別にご案内をさしあげられないことがありますので、ご了承下さい。

外来予定表

新来:木曜午前

再来:齊藤 火曜午前・午後、水曜午前

   須山 木曜午前・午後

   大島 金曜午前・午後

  • - お問合せ・ご予約 -
  • 北海道大学病院精神科神経科外来
  • 電話:011-716-1161
  • 交通アクセス

治療について

北海道大学病院子どものこころと発達センターでは、受診した患者さんの診断および評価を行い、もっとも良いと考えられる治療方法を選択します。治療方法には様々な方法があり、丁寧にお話を聞き、気持ちを整理していく場合もありますし、関わりの工夫をしていくこともあります。お子さんの状態によってはお薬による治療を行う場合もあります。どの治療を行うにしても、まずは主治医、本人、ご家族とよく話し合って治療を進めていきます。

【精神療法】

児童思春期精神科領域では、お話を聞くことから診療が始まります。患者さんの言葉を通して、患者さんの心理的な状態を把握し、言葉のやりとりや言葉以外のやりとりをとおして患者さんの心身に働きかけていく治療を行います。またご家族が一緒に入ることによって治療の協力者になっていただくこともあります。

【薬物療法】

児童思春期精神科領域では、お薬による治療を行うこともあります。日本国内では、児童に対して適用外となっているお薬も多くありますが、これまで海外などで有効性が示されてきたお薬などについて、慎重に適応を考慮し使用することがあります。むやみにお薬を使用することはありませんが、必要な患者さんには、よく説明を行い、納得をいただいた場合にお薬の治療を行います。

【PCIT】

北海道大学病院子どものこころと発達センターでは、2022年5月より、PCIT(Parent Child Interaction Therapy; 親子相互交流療法)を開始しました。PCITは子どものこころや行動の問題、また育児に悩む親(養育者)に対し、親子の相互交流を深め、その質を高めることによって回復に向かうよう働きかける遊戯療法(プレイセラピー)と行動療法に基づいた心理療法です。落ち着きがない、乱暴な行動がある、といった子ども側の問題だけでなく、子育ての支援が受けられず、どう子どもと接してよいか分からない親にも効果的です。PCITの最大の特徴はライブコーチングです。参加親子にはPCIT専用の部屋でおもちゃを使いながら遊んでもらいます。親にはワイヤレスマイクをつけてもらいます。セラピストはカメラを通して親子が遊んでいる状態を観察しながら、ワイヤレスマイクを通して親の遊び方や子どもへの声かけなどに対してコーチング(アドバイス)します。現在北大で実施しているPCITの対象は2歳〜7歳のお子さんです。一般的には週に1回、1時間のセラピーを十数回受けて頂きます。PCITの適応の可否、具体的な時期や日時については事前に相談した上で実施しています。

【ペアレントトレーニング・家族支援】

子どもの発達やこころの状態を心配されているご家族を支援するために、親子あるいは保護者が疾患のことを学び、困った問題への具体的な対応方法を学べるよう家族支援を行います。H26年9月より、こころの広場「ふくろうさん」として、親子同時参加型のペアレントトレーニングを開始しました(令和5年10月現在休止中です)。

【心理カウンセリング・教育】

児童思春期精神科所属の心理士が、心理カウンセリングや疾病教育を患者さんあるいはご家族に行います。

【ソーシャルワーク・地域連携】

児童思春期精神科所属のソーシャルワーカーが、子どもを取り巻く学校や家庭での困り事に対して、地域の社会福祉サービスや学校などと協力して環境を整えながら問題解決に取り組みます。

対象となる疾患と症状

【不安に関係する症状について】

大人だけではなくお子さんも日常生活の中でストレスを感じていることが多々あります。特に現代の社会はストレス社会と言えるでしょう。そのため、お子さんにも不安と関連する障害が見られることがあります。以下の症状は不安と関連したものです

さまざまな不安に関係する症状があります。

  • icon mark特定のものが怖い…高い所、暗闇、犬、など特定のものに強い恐怖を感じるものです。この恐怖のために、外に出られないなど生活に支障が出てしまいます。
  • icon mark漠然とした不安が常にある…常に漠然とした不安を感じています。何か不幸なことが起こったらどうしよう、地震が起きたらどうしようと、不安がつきまとってしまいます。
  • icon mark人と接する時に過度に緊張してしまう…他の人からどう思われるだろうかが気になり、人と関わる時に違和感をかんじます。時には赤面、心臓がドキドキする、過呼吸なども見られます。これが強まっていくと、人がいる場所や外出することを避け、世界が狭まってしまうことがあります

不安に関連する症状の一つに、パニック発作というものがあります。これは、急に不安に襲われ、時に心臓がドキドキしたり、息ができなくなるような苦しさをかんじたりします。この発作をパニック発作と呼びます。

  • パニック発作の症状は・・・
  • icon mark息苦しさ
  • icon markめまい
  • icon mark発汗
  • icon mark吐き気
  • icon mark手のしびれ
  • などです。

過呼吸などの症状が現れると心臓の病気なのではないか、と思って救急車を呼んだりしてしまうことがあります。

しかし、過呼吸は息をはかずに空気を吸いすぎてしまうことによって血中の二酸化炭素が減ってしまうことによる症状です。死ぬ事はありません。通常10分ほどでピークとなります。20~30分続くこともありますが、一時間以上続くことはありません。

人ごみや逃げられないような場所を怖く感じることもあり、そのために苦手な場を避けてしまい行動範囲が狭まってしまうという弊害もあります。

【身体に表現される症状について】

お子さんの場合、まだ不安や緊張を言葉で表現できないことも多いので、大変さが体の不調として現れます。たとえば、朝学校に行く前にお腹や頭が痛くて学校に行くことができない、などです。不登校に発展することもあります。身体化症状の場合は、どこか体が悪いのかと思い診察や検査を受けても原因がわからず困ってしまうということも多くみられます。

  • 症状として出てくるものは…
  • icon mark頭痛
  • icon mark腹痛
  • icon mark下痢
  • icon mark吐き気
  • など、さまざまでお子さんによって異なります。

痛みを強く感じているお子さんでも痛み止めで治まらないこともあります。

【食事に関係する問題について】

思春期に、食事に関係する問題がみられることがあります。体型を異常に気にしてしまい、そのことから体重が増えることが怖くなります。そのため、過度の食事制限をしたり、食事の後に嘔吐することよって体重が増えるのを防ごうとしたりします。一気に通常量をはるかに超えた量を食べる、それを吐く、といった食事の仕方も問題です。著しい体重減少は要注意です(*)。

  • たとえば…
  • icon mark必要以上に食べ物を制限する
  • icon mark通常量を超えたおびただしい量を食べる
  • icon mark食べては自分で吐く
  • icon mark下剤を使用する
  • icon mark体重を減少させるために過度な運動をするなど人並みならぬ努力をする
  • icon mark痩せているにもかかわらず、さらにやせようとしたり、自分は太っていると思い込む

特に最後の項目はやせているにも関わらず、さらに痩せたいという願望が強くなります。体重が減少すると、生理が止まったり、過度に動くようになったりします。食べ吐きを繰り返すと栄養のバランスが崩れたり、歯がボロボロになったり、若年であれば背が伸びないなどの弊害も出てきます。

(*)体重の目安:BMIという指標があります。

【幻覚・妄想状態について】

幻覚・妄想状態では、現実とはかけ離れた奇妙な考えや体験、行動がみられることがあります。本人には変だと感じず、本当に起こっていることのように感じます。ストレスがかかりすぎると一過性でもこのような症状が出ることがあります。

  • たとえば…
  • icon mark自分の考えが読まれているような気がする
  • icon mark人が自分のことを噂している声が聞こえる
  • icon mark自分の後を誰かがつけている
  • icon mark自分の考えや行動を他人がコントロールしているように思う
  • icon mark会話が困難で、支離滅裂になるときがある
  • icon mark考えをまとめることができない
  • …というような症状がみられます。

他にも

  • icon mark引きこもる
  • icon mark感情の表現が乏しくなった

このような症状も一つのサインのことがあります。

【ささいなことにこだわってしまう】

時間を守る、ルールを守る、ということは社会生活ではとても大切なことです。しかし、自分なりのルールができてしまい、それを行わないと不安で仕方がなくなってしまうことがあります。分かってはいても確認することがやめられなかったり、同じ考えがグルグルと頭の中を回り、離れられなくなってしまいます。本人はそのことでとても苦痛をかんじます。これがひどくなると一つの行動をすることにとても時間がかかってしまったり、行動が制限されてしまい生活に支障が出てきてしまいます。

  • たとえば・・・
  • icon mark手洗いを何度も繰り返す
  • icon mark何度も確認をする
  • icon mark物事を行う順序が決まっていて、それを破ることができない
  • icon mark考えが追い払いたいのに追い払えなく、グルグルと同じ考えが繰り返し浮かんでしまう

【落ち込む、元気がないなどのうつ状態について】

元気がなくなったり、食欲が落ちることがあります。抑うつ状態になると、本人の努力とは別に朝起きられなくなったり、集中力が落ちたりします。身体症状の訴えがほとんどで、なかなか抑うつ状態に気づきにくいこともあります。

子どもは、なまけているわけでも、努力が足らないわけではありませんが、成績が下がることもあります。

  • たとえば、こんな症状はないでしょうか?
  • icon mark怒りっぽく、イライラしている
  • icon mark食欲がなくなった
  • icon mark好きだったおかずをおいしそうに食べなくなった
  • icon mark夜眠れない
  • icon mark朝起きられない
  • icon mark好きだった遊びをしなくなったり、好きなテレビ番組をみなくなった
  • icon markちょっとしたことで悲しがる、泣いてしまう

【読むのが苦手・書くのが苦手・算数が苦手】

全体の知能は問題がないのに、読むことだけ、書くことだけ、計算だけ(またはこの中のいくつかの組み合わせ)が苦手、ということがあります。

  • こんなことはありませんか?
  • icon mark一生懸命読むが同じ行を読んだり、飛ばしたりしてしまう
  • icon markひらがなあるいはカタカナが読めない
  • icon mark一文字ずつ読んでいて、文章を理解できない
  • icon mark文字を書くのが苦手で鏡文字になってしまう
  • icon mark話せるのに書くとなると文章が書けない
  • icon mark筆算の桁がずれてしまう
  • icon mark簡単な計算ができない
  • icon markくり上がり、くり下がりを理解できない

本人の勉強が足らない、努力していないわけではなく、ある特定の分野だけ苦手なことがあります。

このような心配がある場合は、苦手な部分と得意な部分を知るための検査もあります。

【社会性・コミュニケーション・言葉の遅れの問題】

お子さんによっては友達づきあいがうまくいかなかったり、コミュニケーションがうまく取れないことがあります。また、突然の出来事に対応しきれず混乱してしまい、周りからは“キレやすい”と思われてしまうことがあります。

本人の我慢が足らないからとか、育て方の問題ではなくコミュニケーションの独特さを持っています。

  • たとえば…
  • icon mark言葉の遅れがある
  • icon mark一人遊びを好み、同年代の子どもたちと遊ばない
  • icon mark自分の考えや経験を他人も知っているものと思い込んでいる
  • icon mark言葉を字義通りに捉えてしまったり、文脈を読むことが難しい
    (例「やかんの火をみていてね」というと沸騰しても止めずにじっと見ている)
  • icon mark突然の予定の変更が苦手で不安になったり、混乱する
  • icon mark興味・関心が偏っている
  • icon mark暗黙のルールがわからない

【不注意や多動(ADHD症状)について】

ADHDは、落ち着きのなさと不注意がみられる障害です。日本語では注意欠如多動症と呼ばれています。ADHDでは、刺激が一遍に入ってきてしまい、それぞれに注意が行ってしまいます。

  • たとえば・・・
  • icon mark落ち着かずたえず体を動かしている
  • icon mark授業中など座っていなければならない場面でもじっとできず歩き回ってしまう
  • icon markしゃべりすぎてしまう
  • icon mark順番が待てない
  • icon mark人が会話をしたりゲームをしていても間に入って邪魔をしてしまう
  • icon mark勉強や遊びの中で細かいところまで注意がいかずにちょっとした間違いをしてしまう
  • icon mark周りの音や出来事で気が散ってしまいやすい
  • icon mark1つの事をやり遂げられず、途中で他の事に注意がそれてしまう
  • icon mark忘れ物やなくし物が多い
  • などがみられます

臨床試験

北海道大学病院子どものこころと発達センターでは医療・医学の発展のため、臨床試験を行っております。臨床試験とは、診断や評価に有用と考えられる心理検査、脳機能検査を行う他、治療に有効と考えられるお薬を使用するものです。これらの臨床試験は北海道大学病院の自主臨床研究委員会などの承認を得て行っています。ご関心のある方は主治医にお尋ね下さい。

ひまわり分校

当院には小学生、中学生の入院患者さんが通える学校(ひまわり分校)があります。詳しくは札幌市立幌北小学校ひまわり分校、札幌市立北辰中学校ひまわり分校のホームページをご覧下さい。通学の可否は病状や入院期間などを考慮して決定します。